全英が泣いたテレビ番組場面も再現「前向きなメッセージを受け取って」 ジェームズ・ホーズ監督「ONE LIFE」
現在を理解するために過去というレンズを使う
ナチスやその周辺を描いた映画は、日本でも毎年何本も公開されている。それぞれ異なる視点やアプローチがあり、史実から生まれた作品もかなり多い。「我々は現在を理解するために、過去を使う。世界的にダークな場所(状況)にいる時は、なぜこうなってしまったのか理解したい。そこで使うレンズの一つが近い過去。ナチスの映画が作られ続けているのは、過去の検証でもあるが、現在を理解したいという欲求の表れでもある」 ホーズ監督が続けて語る。「ヨーロッパ、僕が住むイギリスではいまだに第二次世界大戦のエコー(こだま)がとても大きい。存命の方もいる。仕事場に行く時も、爆撃の痕が残る場所の近くを通っている。当時の感覚が今も生きている。また現在の状況も深く関係している。ホロコーストの作品が多いのは、現在の中東情勢が一因ではないか」 イスラエルによるパレスチナでの虐殺は解決の糸口が見えない。結果的にこうしたタイミングでの公開になった。「世界がこうした時だからこそ、この作品がポジティブなメッセージを持っていることに誇らしさを感じる。観客には、気持ちが励まされる作品であると伝えたい」 今起きていることをどう考えるか。「ウクライナとロシアの戦争やガザでの紛争は、どちらも歴史的な経緯があって今の状況になっている。ニコラスも僕も、言いたいことは同じ」。こう続けた。「人類は過去のあやまちから学ばなければいけない。なぜなら、過去は起きてしまったことではなく、今に続き、まさに今起きていることだからだ」
映画記者 鈴木隆