「おうむ返し」に落ち込んでしまう…自閉症児の親御さんに専門家が伝えたいこと
自閉症のお子さんの特徴として、よく例に挙げられるおうむ返し。しかし、おうむ返しはれっきとしたコミュニケーションであると、発達科学コミュニケーションマスタートレーナーの今川ホルンさんは語ります。 自身も自閉症児の母である今川ホルンさんが、子どものおうむ返しに落ち込むママ・パパに伝えたいこととは?著書より抜粋してご紹介します。 ※本記事は、今川ホルン著『脳を育てれば会話力がみるみる伸びる! ことばが遅い自閉症児のおうち療育』(パステル出版)より、一部を抜粋編集したものです
子どものおうむ返しに困っています
●NG対応…おうむ返しに一喜一憂する おうむ返し=自閉症というイメージが強いせいか、わが子がおうむ返しをするたびに落ち込んでしまう親御さんがよくいらっしゃいます。しかし、本当に困っているのは、お子さんのおうむ返しなのでしょうか? 確かに、表に見えるお悩みは、子どもがおうむ返しばかりで会話が成立しないことです。しかし本当の問題は、親がわが子に「自閉症の〇〇君」というレッテルを貼ってしまっていることかもしれません。 想像してみてください。もし、あなたががんを患い、周囲から「がん患者の〇〇さん」と呼ばれたら、あなたやご家族はどう思うでしょう。たまたま患った病気の名前を代名詞にされるなんて、あまりにも悲しくて寂しいことです。自閉症も同じです。決してお子さんの代名詞ではありません。ありのままのお子さんを受けとめてあげましょう。 ●OK対応…肯定的に受けとめる おうむ返しはれっきとしたコミュニケーションです。 ママの「プール入ったの?」という声かけに「プール入ったの?」とことばで反応するのは、実はすごいことなのです。ママやパパのことばを聞いて、ことばを返す―、これは子どもがコミュニケーションをとろうとしていることに他ならないからです。 自閉症の子は、約80%が知的障害を併発するとされています。おうむ返しをするお子さんは、脳が未熟で質問の内容や、場合によっては質問されていること自体わからず、ただことばを繰り返しているだけかもしれません。 「おうむ返しは自閉症っぽくて嫌だ!」と落ち込まず、まずお子さんが大人と同等のことばを聞き、覚え、正確にことばを再現して発していることを褒めてあげてください。褒めると会話力が伸びます。 おうむ返しをする子に「ことばを話してくれてありがとう」と言いましょう。これは嘘でもおだてでもありません。いまは返すことばが思いつかなくても、褒めてことばのキャッチボールを繰り返すことで、子どもは自然と会話の練習をしているのだと理解しておきましょう。
今川ホルン