掛布が語る「阪神の中に入って消えた不安」
ただ、その中でも、何をすればいいのか、どの方向に向かえばいいのかという方法論に迷っている選手もいる。その手助けをしてあげるのが私の仕事だと思っている。 ■選手からの”遠慮”を排除し「楽しく追い込む」 私が若い選手にお願いしたのは「楽しく追い込め!」というテーマである。 彼らは、私の現役時代など知らない世代のはずだが、最初は何か遠慮のようなものを持っているように感じた。私は、そういう目に見えぬハードルのようなものを取っ払って彼らの中に積極的に入っていくことにした。 目線を彼らと同じにして、こちらから「ちょっかい」を出してやるのだ。例えば、新井良太を「おい!ミスター」と呼んでやる。彼も冗談で「元祖ミスター」とやり返してくる。前述した森田の「小バース!」の命名もそうだ。息子より下の若い年代である。彼らの真剣な姿は可愛いし、彼らとのやりとりを私も楽しませてもらっている。 とにかく、この秋は、バッティングだけでなく、ランニングやノック、そのすべてにおいて、まずは、楽しく一緒に野球をやることで、選手一人ひとりの動きを良く見て、その実力と能力を把握し、話を聞き、彼らが何を考えているかを知ることに時間を費やしている。そして、私自身が、元気を出して楽しい雰囲気と環境を作ることを心がけている。 ■1軍で活躍できるヒントを若手に与えたい 練習とは辛いものである。だが、辛い練習でないと身にはならない。だからこそ、楽しく気持ちよく練習をやれることが進歩につながるのだ。 この秋は、あくまでも臨時コーチだが、来年2月からは、もっと深く立ち入っていかねばならないだろう。1軍から落ちてきた選手、一軍へ上がろうとする選手に何が足りないのか、これをやれば上に認められるだろう!というものを根気強く継続しながら手助けしていければいいと考えている。いきなり2軍で2割だった選手を、1軍で3割を打てる選手に数か月で育成することは難しいだろうが、そうなるためのヒントや、兆しが見えるくらいには自信と技術を持たせてあげたい。