掛布が語る「阪神の中に入って消えた不安」
課題を持って低いライナーを打っていた。1軍で戦う中で、やるべきこと、自分が力を発揮するためのチームから求められているものを理解した上での取り組みである。彼の考えた課題と取り組みの方向性は間違っていない。そのバッティングを固めて、自分のモノにすることができれば、一軍の戦力になることができるだろう。私が送ったアドバイスは1点だけである。「上体が伸びあがってしまうことがあるので、そこだけを気をつけろ!」と。 大和の練習への取り組む姿勢も、意図と課題が見えるものだった。彼もできる限り低いライナーを打ち続けることを徹底していた。彼の場合、バントの成功率の低さも問題点だった。それが、チームの作戦にも影響を与えてしまったし、彼自身の打率を下げてしまう原因にもなっていた。彼は、私に「来年は犠打を50以上は成功させたい」と語り、プレッシャーの中でバントを成功させることを想定しながら練習をしていた。 ■”悔しさ”が若手の原動力になっている 2人に共通しているのは、怪我で納得のいくシーズンを送れなかった悔しさだ。一昨年からセカンドのレギュラーポジションをつかみそうになっていた上本は、春先に怪我をして今季加入した西岡にポジションを奪われた。大和も同じだ。夏場に故障でリタイヤ。巨人との優勝争いという重大な局面で戦力にならなかった。その反省からくる悔しさを持っている。誰に命令されるわけでもなく、そういう悔しさが彼らを変えた、自分で考え、課題をもって、粘り強く練習するんだという高い意識を植え付けさせたのである。 ■2007年のドラ3森田は「小バース」 2007年の高校ドラフト3位で入団した森田一成もそうだ。私は彼を「小バース」と命名した。天性の打球を遠くへ飛ばす才能を持ち、そのポテンシャルは高い。桧山が引退。左バッターの1軍枠がひとつ空いたことがわかっていて「そのポジションを奪い取る」という強い気持ちを感じる。左バッターは、実は、右足の踏み込みと、その肩の使い方が非常に大事なポイントになってくる。「ボールを受け止めるな」、「肩をレベルに使え」というようなことを教えているのだが、こういう若手が、高い意識を持って練習していることに意義があると感じた。阪神の選手は、心配せずとも悔しさと向上心を持っている。