掛布が語る「阪神の中に入って消えた不安」
25年ぶりに阪神タイガースの現場に復帰した。「GM付育成&打撃コーディネイター」という役目を拝命して高知・安芸のグラウンドに入った。長い年月……を経たという、そういう個人的な感傷よりも、我が阪神タイガースへの不安が先に立った。 ■複数の不安を抱えて臨んだ秋季キャンプ 不安の中身はいくつかある。外から見ていた阪神タイガースに対する先行きの不安と若手を育てるという仕事を任されたものの、やるのは選手。その肝心の若手が、どんな能力を持っていて、どんな課題をもって、どんな気持ちで、そして、どこまで自分を練習で追い込めるのか。そして、私は若手の底上げという責任を果たせるのかという不安である。 和田監督は、シーズン終了後に「1年を戦い抜くスタミナがなかった」というチームの課題を口にしていた。8月、9月にチーム成績は、ガクっと落ちた。そしてクライマックスシリーズでの広島に対する完敗。そのスタミナ不足の解消には、若手の底上げしかない。それは、和田監督もフロントの人たちとの共通認識であり、私に期待されている責任の部分でもある。だが、肝心の若手選手たちにその自覚がなければ、おそらくまたシーズン終了後に首脳陣は、同じ課題を口にして終わることになるだろう。 ■不安は杞憂に 注目は上本、大和と左の森田 いざ、チーム内に入ってみると、それらの不安は杞憂に終わった。選手一人ひとりが、自分で考え、課題を持ちながら、秋季キャンプに突入していたのだ。気持ちも、そして思った以上に若手に能力がある。 「やり方によれば戦力になるぞ!」 それがチームの内側に入った私の第一印象だ。 まず目についたのは、上本博紀と大和である。プロ6年目となる上本博紀は、インコースにしっかりとしたツボを持っている選手だ。飛ばすパワーもある。なのにバッティングを見ていると、気持ちよくバットを振るだけのような練習はしていなかった。窮屈にセンター中心に打ち返すバッティングを徹底していた。