エバーグリーン、メタノール焚き整備。小型船も国際入札。2400TEU型6隻発注へ
台湾船社エバーグリーンは、メタノール燃料焚(だ)きの2400TEU型コンテナ船6隻の新造整備で国際入札を進めている。情報筋によると、納期は2027年で、このほど応札を締め切ったようだ。同社はこれまで日本の今治造船や中国の中国船舶集団(CSSC)、韓国のHD現代重工業などで新造船を建造しており、今回の商談でも日本シップヤード(NSY)が応札している公算が大きい。一方、NSYはエバーグリーンが初の新燃料船として整備を決めたメタノール焚きの1万6000TEU型8隻を昨夏受注しており、27年船台をさらに捻出できるかは未知数だ。 エバーグリーンはメタノール対応の2元燃料(DF)エンジンを搭載した2400TEU型6隻の新造整備の国際入札開始について、海運ブローカーや造船所に通知。要件の詳細は不明だが、27年内の極力早い納期を求めており、自社船を条件としているようだ。 応札の締め切りは先月後半で、入札通知に基づき造船所が新造船の仕様と船価を提示した。今回の1次入札で建造ヤードを決めるのか、選定した複数の造船所を対象に2次入札を行って建造ヤードを最終決定するかは、エバーグリーンは明らかにしていない模様。 同社はこれまで2万TEU超の超大型コンテナ船も重油焚きで整備してきたが、初のDF対応船として昨春、メタノール焚きの1万6000TEU型24隻の新造整備を決定。国際入札の結果として昨年7月、NSYに8隻、韓国のサムスン重工業に16隻をそれぞれ発注した。納期は非公表だが、27年とみられている。 今回の入札に参加している造船所は不明。しかし昨春の入札には、日中韓の主要ヤードが応札していた。 またエバーグリーンは21年3月のメガコンテナ船のロット商談で、1万5000TEU型20隻の整備を決めた際、建造ヤードはCSSC傘下の滬東中華造船と江南造船、日本の今治造船、韓国のサムスン重工、現代重工業の5社から選択すると公表していた。今回も日中韓の主要造船所が応札しているとみられる。 21―22年のコンテナ運賃市況の高騰で手元資金が潤沢になったエバーグリーンは近年、新造用船ではなく自社船による新造船の調達を志向。昨年整備を決めた1万6000TEU型24隻の大型商談に続き、今回の2400TEU型6隻も自社発注する模様だ。 自社船での整備では新造用船と異なり、造船所にとっては船価勝負の側面が強まる。このため、今治造船グループの船舶保有会社、正栄汽船を活用した用船ベースの営業スキームに強みを持つNSYには逆風で、1万6000TEU型の商談も当初、売り切り型で安値を提示する中国造船所が優位との見方があった。 しかし、ふたを開けてみれば、NSYは中韓のメガヤードに競り勝ち8隻を受注。今治造船が18年から竣工させた2800TEU型10隻シリーズ以来、エバーグリーンの自社保有船を成約し、メタノール焚きコンテナ船の初受注を決めた。 昨年の1万6000TEU型の入札では、建造ヤードの候補は「日本と複数の韓国ヤードに絞られ、中国造船所は最終選考に残らなかった」(市場関係者)とされる。このことから台湾船社のエバーグリーンが、台湾有事を含む中国での政治・経済や地政学上のリスクの高まりを忌避した可能性も指摘されていた。 今回の入札の行方は不透明な情勢だ。 NSYはエバーグリーンからメタノール焚き1万6000TEU型8隻を27年納期で受注しているとみられ、期近な船台をこれ以上捻出できるかが課題。韓国の大手造船所も27年船台はほぼ完売しているとみられる。 一方、中国造船所は前回の大型船の入札で選考から漏れたが、エバーグリーンは直近の小型船の新造商談で21年秋、CSSC傘下の中船黄埔文冲船舶にフィーダーコンテナ船24隻を一括発注した実績がある。 今回の商談では日韓中とも27年船台が希少となる中、エバーグリーンが中国造船所の地政学リスクをどう評価するかが焦点の一つになりそうだ。
日本海事新聞社