1日200g果実食べよう 発病リスク減らす効果 厚労省が目標摂取量改定
これから果実の中で一番生産量が多い温州ミカン、リンゴのシーズンを迎える。一方で、国民1人当たりの果実の消費量は年々減少している。果実にはさまざまな病気のリスクを減らす効果があり、厚生労働省は2024年度から果実の目標摂取量を従来より引き上げた。果実をしっかり食べ、秋冬も元気に過ごそう。 【図で見る】年齢別の果実消費量
ミカンなら2個、梨は1個
厚労省は、食物摂取量の目標値を定める「健康日本21」を改定。これまで1人1日当たりの果実の摂取量(ジャムを除く)について、「100グラム未満の者の割合を61%から30%に減らす」だった目標値を24年度以降、「200グラムの摂取」に変更した。一方、19年時点では摂取量が「100グラム未満」の人は63%で、20~40代では全く食べない人が5、6割に上った。 200グラムの果実は、ミカン2個、梨1個、ブドウ1房、桃2個、リンゴ1個、バナナ2本、キウイフルーツ2個分に相当する。同省によると、1日に200グラムの果実を摂取すると、冠動脈疾患や脳卒中のリスクを減らすことができる他、循環器疾患や肺がんなどの予防にも効果がある。 中央果実協会によると、果実には体調を整えるビタミンや、脳のエネルギー源になるブドウ糖が多く含まれている。また朝に果実を食べると、睡眠中に消費されたブドウ糖を効率よく吸収できる他、唾液の分泌や食欲の増進にも役立つという。 果樹産地の愛媛県栄養士会によると、特に大人から高齢者で塩分摂取が多い人は、果実に含まれるカリウムを取ることで、体内の塩分の排出に役立つ。食物繊維や水分の摂取につながり、便通改善に効果がある。ビタミン類も豊富なため、免疫力向上も期待できる。ただし、果糖が多いため、遅い時間に多く摂取するとエネルギー消費ができないことや、アレルギーへの注意も必要だ。
食べない理由、費用面が最多
同協会が23年度に果実の消費について消費者にアンケートしたところ、果実を毎日食べない理由で最も多かったのは「食費に余裕がない」(54%)だった。果樹の生産は他の品目に比べて機械化が難しく、高齢者の離農が進み、生産量が減少していることが高値の要因になっている。 2番目に多かったのが、「日持ちせず買い置きできない」(33%)だ。温州ミカンなどのかんきつ類は箱から出して風通しの良い場所で保管したり、リンゴはポリ袋に入れて冷蔵したりすることでおいしさを長く保つことができる。
カットが主力、売上高2割増
同協会の調査では、手頃な値段と簡便さ、少量販売を求める消費者の回答も多かった。 中国四国地域や兵庫にスーパーマーケットを展開するフジ(広島市)は、種なし果実やカットフルーツの販売を強化。カットの売り上げは昨年に比べ2割増えるなど、「むしろカットフルーツが主力」という。 また、日本冷凍食品協会の調査(23年)では、冷凍の果実類の生産量が533トンと、前年から22%増加。生産量自体は野菜の方が多いものの、伸び幅では他の食品や品目を抑えトップに躍り出た。(溝口恵子)
日本農業新聞