マイナ保険証“強制”の「法的欠陥」とは? “1415人の医師ら”が国を訴えた「行政訴訟」が結審、11月判決へ
9月19日、東京地裁において、東京保険医協会の医師・歯科医師ら1415人が原告となり、厚生労働省の省令によって医療機関が「マイナ保険証」による「オンライン資格確認」を義務付けられたことに対し、その義務がないことの確認を求めて国を訴えた裁判の第8回口頭弁論が行われ、結審した。判決は11月28日に下される。 【画像】マイナ保険証「キャンペーン」後の8月時点でも利用率12.43% 12月2日以降、現行の健康保険証の新規発行が停止され、いわゆる「マイナ保険証への一本化」が行われる。従前から医療現場でのエラーの多発等による業務の停滞、利便性やセキュリティ面の問題・課題が指摘、批判されている。そして、法的観点からも、憲法や健康保険法との関係で重大な問題が指摘されている。 本件訴訟は、まさにその法的問題点の一つを争うために提起されたもの。裁判所がどのような判断を下すのか、注目される。
「オンライン資格確認の義務」を課す「療養担当規則」
原告の医師・歯科医師らが提起した訴訟は、クリニック・病院等でマイナ保険証による「オンライン資格確認」を行う義務を強制されないことの確認を求める「実質的当事者訴訟」である(行政事件訴訟法4条後段)。 オンライン資格確認とは、医療機関や薬局で、マイナンバーカードのICチップの電子証明書により、オンラインで健康保険の被保険者の資格情報の確認ができることをさす。 オンライン資格確認を行うには「顔認証付きカードリーダー」の導入、レセコン・電子カルテ等の既存のシステムの改修、ネットワーク環境の整備等が必要となる。 政府は、2022年6月の閣議決定で、全国の医療機関・薬局に対しオンライン資格確認を義務付けることとした。それに基づき、厚生労働省令の「療養担当規則」が改定され、2023年4月からオンライン資格確認の義務が課されることとなった。 療養担当規則3条1項の規定は以下の通り。 「保険医療機関は、患者から療養の給付を受けることを求められた場合には、健康保険法3条13項に規定する電子資格確認によって療養の給付を受ける資格があることを確認しなければならない」 この「義務化」を受け、2022年8月24日に行われた「オンライン資格確認の原則義務化に向けた説明会」において、厚生労働省の担当者が、オンライン資格確認を行わなければ「療養担当規則違反になり、 “指導”の対象となって、保険医療機関指定の取消事由にもなりうる」と述べている。 保険医療機関の指定を取り消されると、その医療機関は事実上、保険診療を取り扱うことができなくなり、廃業を迫られることになる。 また、「指導」という言葉は、医師の間では特別な意味を持つとされる。過去には「個別指導」を受けた医師が自死する事例が複数あり、2013年には石井みどり参議院議員(自民党・歯科医師)や小池晃参議院議員(共産党・医師)らが制度のあり方と行政の対応を問題視し、健康保険法の改正を訴えた。