水道橋博士が語る景山民夫の魅力を復活させる秘策とは 「迷惑ユーチューバーのような見方をされる(笑)」
「もともと、殿(ビートたけし)と高田文夫先生ありきです。ビートたけしの最側近作家だったお二人が雑誌の『スタジオボイス』でコピーライター全盛期時代に〝放送作家ブーム〟を勝手に宣言して、『文夫くんと民夫くん』でコンビを組まれて活躍をはじめて、カッコよかったの。文章的には雑誌の『BRUTUS』で始まった連載の『普通の生活』のエッセイに衝撃を受けましたね。高田先生が落語を素養にしていて江戸っ子的な文章を軽妙洒脱に書いて、永六輔の後継的な感じ。一方で景山さんはニユーヨーカー風というか洗練された都会的な感じで常磐新平の後継的な感じです。いちばん覚えているのは、消防車を自家用車として買うっていう話で、『消防車だから、路上駐車をしても違反を取られない』っていう(笑)」 景山が手掛けた作品の中で、代表作のひとつとして挙げられるのが、雑誌『宝島』で連載したテレビコラム『極楽テレビ』。当時、現役の放送作家だった景山が、忖度なく痛烈にテレビを批評する内容が話題となったが、水道橋氏はその一連のコラムよりも『普通の生活』や『ONE/FINE/MESS世間はスラップスティック』といったエッセーにこそ、景山作品の魅力があると話す。 ■“事実を誇張して描く”スタイル 「『宝島』や『スコラ』のテレビの内側コラムではヤンチャに話し言葉で書き飛ばす感じ。景山さんの高校の同級生で同じく放送作家の高平哲郎さんを公然と揶揄していましたよね。たけしVSタモリの構図の反映にも見えました。でもボクは『マガジンハウス』や『週刊朝日』に連載したエッセイの方が好きでしたね。起承転結の整った構成の妙もボキャブラリーもすごいし。あと当時流行ったコラムニストのボブ・グリーンのように日常の1ページをパッと切り取る鮮やかさというか。カート・ヴォネガットのような哀愁もある。もちろん、沢木耕太郎の影響もあるし、英文でそういうコラムやエッセイを日常に読んでるから、こんな文体の文章を書けるんだろうなって。ちなみに『週刊プロレス』でも斎藤文彦さんの連載はそこに共通した文体でしたね。今だと松尾潔さんがそうですね。オチの一文で決める感じ」 こうした魅力に加え、景山の大いなるサービス精神が表れているのが、一部の関係者たちから語られる〝事実を誇張して描く〟スタイル。水道橋氏はこの虚実入り交じる書き方について、次のように評する。