2024年度上半期の「介護事業者」倒産 95件で最多に「訪問介護」46件を中心に、記録的な増加
2024年度上半期「老人福祉・介護事業」の倒産調査
介護事業者(老人福祉・介護事業)の倒産が止まらず、10月には年間最多を更新する見込みとなった。2024年度上半期(4-9月)の「介護事業者」倒産は95件(前年同期比66.6%増)で、2022年度上半期(73件)を大幅に上回り、上半期では過去最多を記録した。特に、「訪問介護」が46件と急伸した。 人手不足やコスト増、報酬の引き下げ改定など、介護業界を取り巻く経営環境は厳しく、先行きが見通せない企業の脱落が相次ぎ、記録的な増加が続いている。 介護保険法が施行された2000年以降の介護事業者の倒産を集計した。2024年度上半期の倒産は、95件に達した。業種別は、「訪問介護」が46件(前年同期比35.2%増)で、上半期で過去最多を記録した。ヘルパー不足が長期化し、高齢化も進行している。 さらに、コロナ禍の利用控えも影響した業績悪化の後遺症やガソリン代などの運営コストアップも収益悪化に拍車をかけた。また、2024年度の介護報酬改定で基本報酬が引き下げられたことで事業継続を諦めたケースも倒産を押し上げている可能性がある。2024年の年間件数は、これまでで最多の2023年(67件)を大幅に上回る勢いで、年間80件を超えそうだ。 次いで、デイサービスなど「通所・短期入所介護」は33件(同106.2%増)で、前年同期から倍増した。運営コスト上昇に加え、大手系列との競合も影響した。「有料老人ホーム」も6件(同100.0%増)と倍増している。 介護事業者の原因別では、販売不振(売上不振)が67件(構成比70.5%)で最も多い。形態別では、破産が91件(同95.7%)と、売上不振で再建を諦めた事業者が大半を占めた。また、個人企業他を含めた資本金1,000万円未満が83件(同87.3%)、従業員10人未満が81件(同85.2%)、負債総額1億円未満が77件(同81.0%)と、小・零細事業者の行き詰まりが多いのが特徴だ。 2024年の介護事業者の倒産は、9月までに132件に達し、2023年(1-12月)の122件を抜いた。このペースで推移すると、10月には年間最多の2022年の143件を抜き、170件を超えるペースだ。
高齢化社会を迎え、介護事業者の重要性は増している。一方で、賃上げに乗り遅れた介護事業者は人材確保が難しくなっている。また、介護報酬は公定価格のため価格転嫁が難しく、経営改善が進んでいない。小・零細事業者が多い業界だけに、国などによる効率化や人材獲得の支援は欠かせない。支援が細れば、倒産増がさらに加速する可能性が高い。 ※ 本調査は、「老人福祉・介護事業」を対象に集計した。内訳は、訪問介護事業、通所・短期入所介護事業、有料老人ホーム、その他に分類した。 ※ 本調査は、介護保険制度が始まった2000年から、負債1,000万円以上の倒産を集計している。