【スーパーGT】タイヤ無交換か、4輪交換か……その選択が明暗分けた52号車Green Braveと2号車muta。両エンジニアの“脳内”にあったもの
富士スピードウェイで行なわれたスーパーGT第4戦富士350kmレース。路面温度50℃超えでスタートした酷暑のレースにおいて、GT300クラスではタイヤ無交換作戦を“お家芸”とするチームの中でも判断が分かれた。 【リザルト】スーパーGT第4戦富士決勝順位速報:CIVICがスーパーGT初優勝! 8号車ARTA完勝。GT300は65号車LEON勝利 ロングライフなブリヂストンタイヤの利点を活かし、ピットストップ時にタイヤを交換しないことでピットでのロスタイムを短縮してポジションを上げるというタイヤ無交換作戦。2号車muta Racing GR86 GTや52号車Green Brave GR Supra GTは、この作戦を活かして結果を残してきたチームの筆頭格であり、今季3戦を終えた段階で2号車がランキングトップ、52号車がランキング3番手につけていた。 ただ今回のレースに関しては従来の300kmレースよりもやや距離が長い(周回数にして77周。GT300は70周前後でチェッカーを受ける計算)ことや、路面温度が高くなったこともあって、タイヤ無交換による性能劣化(デグラデーション)のデメリットが大きいのではないかという指摘もあった。そして迎えた決勝レース、2号車mutaは18番グリッド、52号車Green Braveは19番グリッドと共に下位からのスタートとなったが、43周でピットに入った2号車はタイヤを4輪とも交換。一方で翌周にピットインした52号車は無交換で、作戦が真っ二つに分かれた。 そしてその後もペースも明暗が分かれた。2号車はフレッシュタイヤで追い上げ8位入賞を果たした一方で、52号車はペースが上がらず順位を落としノーポイントに終わったのだ(最終的にシフトトラブルによりガレージイン)。両者の選択が分かれたことからも、非常に難しい判断であったことは想像に難くないが、それぞれのチーフエンジニアに戦略判断の理由を聞いた。
二者択一でややギャンブル的な判断をしたGreen Brave
まずはタイヤ無交換を決断した52号車Green Brave。近藤收功エンジニアが「正直50/50」だったと語るように、タイヤを交換すべきかの判断は難しかったようだ。 「例えばタイヤ無交換によって稼げる時間が12秒~16秒だったとして、タイヤを交換してコース上でペースを上げた方が、無交換よりも10秒20秒速くなるのは分かっていました。ただ、それは他車に引っかからずに抜けた場合です」 「タイヤ交換に関しては迷っていましたが、この路面温度ということでかなり(タイヤに)厳しいので、無交換も視野に入れつつタイヤ交換を……と思っていました。ただ今回は二者択一で無交換をしました」 「結果的にタイヤ交換をした2号車がしっかり抜いていって8番手までいけたので、2号車流石だなといった感じです」 このように、非常に悩ましい判断だったようだが、近藤エンジニアによると予選で下位に沈んだことも、ギャンブル的なタイヤ無交換を選ぶ一因になったという。 「予選5番手~10番手くらいなら、無交換で博打をして沈むよりも、しっかり交換して前でゴールするべき……そういう作戦が事前のミーティングで8割方決まっていましたが、ああいう順位だったので、タイヤがどこまで持つかのタイヤテストも含めて(無交換を)やりました」