「願望」と「可能性」を基に来日する外国人材 その個性と強みを生かすため日本企業に必要なこととは
多くの日本企業が人手不足に悩む中、新たな労働の担い手として期待が高まっているのが外国人材。「日本で働きたい」と希望する外国人は増加傾向にあります。一方で、外国人材を巡る労働条件のトラブルや人権侵害などの問題も発生しています。今後、日本がより外国人材から選ばれるような国になるためには、どうすれば良いのでしょうか。外国人材の受け入れに関する現状と課題について、独立行政法人 国際協力機構(以下、JICA)で外国人材受入支援室長を務める小林洋輔さんにお話をうかがいました。
専門部署を設置し、外国人材の受け入れを支援するJICA
――JICAの概要と外国人材の受け入れに向けた取り組みについてお聞かせください。 JICAは、長年、政府の開発援助を実施する機関としての役割を担っています。特に、開発途上地域に向けた技術協力や資金協力を行うことによって、地域の開発を支援することを使命としています。 海外から来日する労働者の方々に対する支援を始めたのはここ数年で、日本政府が特定技能人材の受け入れを開始するタイミングでした。外国人材の受け入れは、ある意味で民間同士(PtoP)の世界であり、「なぜ政府対政府(GtoG)の枠組みの中で事業を行うJICAが関わるのか」と疑問を持つ方がいらっしゃるかもしれません。外国人材の受け入れは、日本にとって大きな社会課題であると同時に、途上国の経済発展に大きく寄与します。そのため、開発援助の実施機関として可能な範囲で支援しているのです。 ――小林さんが管掌される外国人材受入支援室の役割についてもお聞かせください。 2021年4月に当部署が設立されて以来、JICAにおける外国人材受入事業の司令塔的な機能を担っています。具体的には、外国人材の受け入れに向けた協力の戦略立案のほか、JICA内の事業部門や国内機関などとの折衝・調整、情報の共有などを行っています。
途上国出身者を中心に外国人労働者数が増加
――日本における外国人材受け入れの現状についてお聞かせください。 日本に在留している外国人の数は341万人(法務省調べ、令和5年現在)を超えています。このうち、労働者は約205万人(厚生労働省調べ、令和5年現在)で、その大半は開発途上国出身です。コロナ禍ではその数字が若干落ち込んだものの、基本的には伸びています。特に昨年度は、過去最多を記録しました。 その背景には、「日本で働きたい」という外国人の増加と日本側の受け入れニーズの高まりがあります。人手不足で「外国人材を迎え入れたい」と考える日本企業が多くなっているのです。 JICAは、今後も日本に必要とされる外国人労働者の数が増加すると予想しています。ただし、現時点でのシミュレーションによると、期待される外国人労働者数と実際に来日する労働者数の間にはギャップが生じ、2030年には約77万人、2040年には約97万人の不足が発生すると見込まれています。 ――日本社会で働く外国人材の現状についてお聞かせください。 まず、「在留資格」という概念があり、身分に基づく資格を除けば、来日する外国人材が就ける仕事は基本的に決まっています。大ざっぱに主要なものを申し上げれば技能レベルが低い順で、「技能実習」「特定技能」があり、その上に「技術・人文知識・国際業務(技人国)」があります。いわゆる、ホワイトカラーです。 「技能実習」「特定技能」で来日するのはベトナムや中国、インドネシアなどの方々が多くなっています。「技術・人文知識・国際業務(技人国)」は欧米の方も一定の割合を占めますが、やはりアジアの途上国の方が大半を占めますね。 「技能実習」「特定技能」の方々が就く業種は、製造業、建設業、介護、農業・漁業などが多いのですが、政府は特定技能の対象分野をさらに広げつつあります。 来日する際に保有しておくべき日本語能力は、在留資格によって異なります。技能実習生に関してはこれまで明確な基準がありませんでした。ただ、技能実習制度が育成就労制度に切り替わるなかで、今後は日本語能力試験「N5」レベル(基本的な日本語をある程度理解することができる)が目安になる予定です。特定技能は元々「N4」レベル(基本的な日本語を理解することができる)が必要とされています。