小泉元首相が会見(全文1)原発が「安全・安い・クリーン」はウソ
「3.11」と福島第一原発事故が転機
記者1:16年ぶりですね。(英語) 小泉:総理のとき、原発が必要だと言ったのに、なぜ辞めたらゼロにするのか、よく聞かれる質問ですよ。簡単に言いますよ。2009年に私は政界から引退しました。そして時間があったからいろいろ面白い本を読んだり、音楽を聴いたり、のんびりしてたんですけども、2011年の3月11日に、あの東北の地震、津波、福島原発のメルトダウン。あれ以来、テレビの報道をよく見てたんですけれども、連日報道されたのは悲惨な状況。そして日本の原発は大丈夫だと。スリーマイル、チェルノブイリの事故があったにもかかわらず日本は違う、絶対安全だ。もう十分な多重防護体制。そういう議論を信じていた。ところが、あの悲惨な状況を連日見て、安全だと言ったのにそうじゃないかと、疑問を持ち出した。 そこで原発関係の本を読むようになった。日本に導入された経緯から、なぜ安全なのかって言ってる人々の主張。それを読むうちに、今まで原発必要論者、推進論者の言っていた3大大義名分、なんて言っていたか。日本の原発は絶対、安全。コストは他の電源に比べて一番、安い。もう1つ、3つ目、CO2を出さない永遠のクリーンエネルギー。これが自分で勉強するうちに、本を読むうちに、全部うそだと分かったから。全部うそなんですよ。絶対安全でもない。コスト? 今、原発、一番、かかる。いかなる電源に代えても一番、金のかかる産業になっちゃった。CO2を出さない? それは原子炉の中でウラン燃料を燃やして、電気を供給するところだけですよ。原発1基を造るのに当時は約5000億かかると。今、1兆円以上かかるといいますよね。それ以外に鉄はたくさん使う、セメントはたくさん使う、CO2をたくさん出てるんですよ。コストが安いのは、あの原子炉の中でウランを燃やして電気を供給するところだけ。 そういううそがはっきり分かったから、だまされた私が悪いんだけれども、『論語』に「過ちて改めざる、これを過ちという」、そういう『論語』は昔から教わってるんですよ。イイヌマさんほど秀才じゃないけどね。そのぐらいのことは覚えてるの。それで、やっぱり反省を込めて、これはこのうそは信じちゃいけないぞという気持ちがあるから今、国民のエネルギーをもらって、自然のエネルギーを活用して日本は立派にやっていけるという確信を持ったから、原発ゼロに転換したんです。