<スマートスタイル>センバツ平田 第2部 野球体験会の真価/上 「楽しさ知ってほしい」 競技人口減少に危機感 /島根
第92回選抜高校野球大会(阪神甲子園球場で3月19日開幕)に21世紀枠で出場する平田(出雲市)。その選考過程では、秋の中国大会でベスト8入りした実績に加え、野球人口の増加を目指して幼稚園児や保育園児を対象にした野球体験会の取り組みが高く評価された。メンバーの減少に頭を悩ませる地元の少年野球チームの現状を含めて報告する。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 「長男が子どもの頃、試合を成立させるために小学6年に交じって1年や2年の子どもがプレーせざるを得ないのを目の当たりにした。何とかしないと、との危機感から、まずは野球の楽しさを子どもたちに味わってもらいたくて」。体験会を始めたきっかけを、植田悟監督はそう振り返る。1月24日の夕方、センバツ出場が決まってグラウンドで喜びを爆発させる選手たちを眺めながら、神妙な顔つきになった。 県体育協会のまとめでは、県内で軟式野球のみを競技種目として登録するスポーツ少年団は2010年度に93団体・1918人だったのが19年度には66団体・1254人まで急減している。 出雲市多伎町を中心に活動する多伎野球スポーツ少年団を訪ねた。 「野球を始めてすぐの2年生に打球が転がるとトンネルしてしまい、ランニングホームランになる場面もあった」。監督の岡田孝浩さん(44)が話す。小学生11人のうち3年が1人、2年が2人。体調不良の上級生がいればたちまち低学年の選手に出番が回る。 「上級生がそろうチームとはレベルに差がありすぎる。練習試合すら組めないことも多い」。選手が約20人いた18年度には年間約70試合をこなしたが、19年度は30試合ほどに減少。同様に下級生が交じるチームを探して試合を申し込むという。 自身も多伎町内のスポーツ少年団でプレーしていた岡田さん。当時は4、5、6年にそれぞれ15人前後そろっていた。現在は少人数ゆえに必然的に試合経験が積める点を「悪いことではない」としつつも理想は「最低限のレベルを身に付け、近い学年同士で対戦すること」。約1年前から所属する2年の秦秀斗さん(8)は「相手ピッチャーが上級生だとバットに当たらないし、ボールが速くて怖い」と打ち明ける。 全日本軟式野球連盟のルール改定により、20年度からは小学生の全公式戦で投手1人の投球数が1日70球以内に制限される。岡田さんは「けが予防の観点では必要だが、ピッチャーができる選手を複数そろえるのは大変」と悩む。【鈴木周】