経営破綻からのV字回復 生協のコープさっぽろが見つけたビジネスチャンス 食と生活インフラを守る「社会貢献」
給食を維持できない自治体向けのスクールランチ事業
本来、行政が担っていたサービスを事業化した代表例が、襟裳岬からほど近い人口約4000人のまち様似町で2021年にスタートしたスクールランチ事業です。 もともと東日本大震災後に放射能物質を含めたトレーサビリティができている食材で安心できる給食サービスをしてもらえないかという問い合わせから、2012年に幼稚園への給食事業をスタートしたのが始まりです。 深刻な少子化で、自治体では給食センターを維持することは予算的に難しくなる中、地域のニーズとしてコープさっぽろに給食サービス提供の依頼が舞い込みました。 大見「学校給食は法律で細かい規制があります。そこで法律の問題をクリアできるように検討し、スクールランチ事業としてあたたかいお昼ごはんを子どもたちに届けるサービスをスタートしました。 スクールランチ事業のほかにも、施設や病院への配食事業も行っています。こういった夕食宅配・スクールランチサービスは4、5年後には200億円規模のビジネスになると予想しています」
葬儀事業も高齢化に合わせて今後、需要が拡大するマーケットです。道内にある葬儀会社を関連会社化し、直営ホール32、提携ホール21を所有し北海道でもトップクラスの葬儀場数に。3年後には100億円ほどの売り上げを見込んでいます。 エネルギー事業では、電力と灯油で北海道電力、北海道ガスに次ぐ第3位のシェアで、売上は約250億円の売り上げを誇ります。 大見「行政のできないことはどんどんコープさっぽろが担っていこう、と考えています。行政サービスはコストがかかるというイメージがあるかもしれませんが、それは法律の規制や非効率さが原因です。 我々のような民間がやることで、コストを抑えて効率的にビジネスを回せることも多くなります。すでにほかの市町村から多くの問い合わせが来ています」
1兆円規模を売り上げる北欧のコープをベンチマーク
このような「社会貢献×ブルーオーシャン」の発想でビジネスを展開できるのは、生協という組織の特性も大きく影響しています。 大見「株式会社と違い、組合員が生協の方向性を決めて運営。我々職員は組合員から負託を受けた専従職員という関係性です。ですから、『コープさっぽろならこういうことができるのでは?』という組合員のニーズに応えるのが事業の根幹になってきます。 それにひとつひとつ答えてきたことで、我々の事業に対する組合員の期待値も上がり、それがまた新しいチャレンジへと結びついていくという広がりになっています」 社会貢献を理念に掲げる企業は多くありますが、直接、利用者である組合員と結びついているという点で、その温度感は必然的に高くなります。 また、企業の場合、株主への配当で還元しますが、コープさっぽろは出資金への配当はなく内部ポイントで還元。株式会社に比べて資本調達コストが低く済むことで、さまざまな投資へと回すことができます。 大見「その点はライバルよりも大きなアドバンテージといえますね。おかげで過去10年間に総額約1000億円の投資ができました」 北欧4カ国の生協はそれぞれ1兆円以上の売り上げ規模があります。スイスでは、2つの生協があるのですが、両方合わせて売り上げが10兆円、国内の食料品小売りの90%を占めています。 大見「我々が参考にしているのはフィンランドのコープです。人口は北海道と同じくらいで、売り上げは2兆円。それくらいの規模感を目指しながら、利益を北海道のためにどんどん還元していこうと考えています」