経営破綻からのV字回復 生協のコープさっぽろが見つけたビジネスチャンス 食と生活インフラを守る「社会貢献」
店舗と宅配事業の両輪で、北海道を代表する小売業者として盤石な地位を築いているコープさっぽろですが、その事業は道民の生活インフラをカバーするものへと広がっています。 なぜ生協であるコープさっぽろが、多角化を推し進めるのか。そこには北海道に貢献したい、という強い意志がありました。 コープさっぽろ理事長の大見英明氏が目指す、これからのコープさっぽろの未来を多角化戦略と絡めて伺います。
【大見 英明 Hideaki Omi】 生活協同組合コープさっぽろ理事長。 愛知県出身。 1982年北海道大学教育学部を卒業後、コープさっぽろに入協。 1993年に核店舗であるルーシー店の支配人に。 リニューアル本部長、水産部長、常勤理事商品本部長などの役職を経て、2007年に理事長に就任。 2022年より小樽商科大学商学部特認教授も務める。
組合員のニーズに応える多角化戦略
現在、コープさっぽろでは小売り、宅配業を主軸にしつつ、事業の多角化が進んでいます。関連会社は35社でその売り上げは700億円規模に成長。1998年に経営破綻した際の原因のひとつが多角化だったことを考えたとき、今のコープさっぽろの多角化戦略は当時と何が違っているのでしょうか。 大見「私自身、経営破綻に向かうプロセスを現場から見ていましたが、当時の多角化は戦略なき多角化。マーケティングや財務投資を理解したうえでの経営戦略・戦術がまったくできていませんでした。 今、やっているのは『食品小売業』という軸から派生するものというのが基本です。それが物流であったり、物流の整備会社であったりというように裾野が広がっている。 もちろん、しっかりとした経営戦略にもとづいて展開している点で、過去の多角化とは全く性質が違います」
多角化のキーワードになっているのが「社会的使命」です。 コープさっぽろの関連事業には、夕食宅配・スクールランチサービス、葬儀事業など、社会的ニーズに応えるものが数多くあります。組合員のニーズに応えるという生活協同組合としての使命はもちろんですが、「そういった社会的ニーズにこそブルーオーシャンがある」と大見氏は語ります。 大見「リアル店舗で潰し合いの価格競争をするのは、完全にレッドオーシャンです。では、今の我々の立ち位置でブルーオーシャンは何かというと、行政がカバーできずに困っていることではないか、と考えています」