青学は日本のマラソン界を変えることができるのか?
今夏に開催されるロンドン世界選手権の男子マラソン日本代表(最大3枠)選考会は、福岡、別府大分、東京、びわ湖の4レース。福岡は川内優輝(埼玉県庁)が2時間9分11秒で日本人トップ(3位)、別府大分は中本健太郎(安川電機)が2時間9分32秒で制した。現時点では川内と中本が日本代表に近い位置にいる。 2月26日の東京は今回からコースがリニューアル。「高速コース」の期待が高まっている。男子は世界歴代4位タイの2時間3分13秒を持つウィルソン・キプサング(ケニア)を筆頭に、2時間4分台のタイムを持つ選手が4名、5分台が1名、6分台が4名という豪華メンバーだ。気象条件が良ければ、トップ集団は「世界記録」を狙えるペースで、遅くとも「日本国内最高記録(2時間5分18秒)」が更新できるペースで進むと見ていい。 日本勢も現役最速タイムの2時間7分39秒(日本歴代6位)を持つ今井正人(トヨタ自動車九州)、前回、30kmからの5kmを14分54秒という高速ラップで刻んだ服部勇馬(トヨタ自動車)、リオ五輪1万m代表の設楽悠太(Honda)ら有力選手が集結した。ただし、トップ集団が超高速レースになることを考えると、どの位置でレースを進めるべきか判断が難しい。 3月5日のびわ湖には、2時間4分52秒の自己ベストを持つエンデンショー・ネゲセ(エチオピア)、2時間5分13秒のビンセント・キプルト(ケニア)が招待されているとはいえ、東京と比べてレベルは落ちる。日本勢もリオ五輪代表の佐々木悟(旭化成)と石川末廣(Honda)、2時間8分台の記録を持つ松村康平(MHPS)と山本亮(SGHグループ)が実績では最上クラスだ。 直近3年間の優勝タイムは2時間9分10秒(16年)、同8秒(15年)、同11秒(14年)と2時間9分10秒前後。ネゲセやキプルトが飛び出す可能性もあるが、大集団は2時間8分台が狙えるペースで進むだろう。一色の実力を考えると、ちょうどいいペースになる。当初は東京を希望していたが、身の丈に合ったレースを選択したともいえる。なお、びわ湖には箱根駅伝の5区で区間賞を獲得した大塚祥平(駒大)もエントリーしている。 一色が2時間8~9分台で日本人トップを飾れば、「東京五輪の星」と、多くのメディアが称賛するはずだ。しかし、2時間8分台では、世界トップに太刀打ちできない。本気で東京五輪のメダルを狙うなら、2時間4~5分台を目指すようなプロジェクトを考える必要があるだろう。チーム・アオガクにはそれくらい大きなスケールで取り組んでほしいと思う。 (文責・酒井政人/スポーツライター)