御坂山塊への前衛峰としても楽しめる! 富士山にもっとも近い山頂「清八山」は「本社ケ丸」との縦走で旨味倍増
標高1593mの清八山は遮るものなしの富士見のためにある山頂と思えるほどに素敵な眺望が待ち受けています。秀麗富嶽十二景の全20座なかで、もっとも富士山に近い登山口は最寄駅のJR中央本線・笹子駅からは距離遠く、山頂手前の清八峠までの道行きにおいても眺望に恵まれているとは言い難いのですが、その時間をかけた褒美への満足感は素晴らしいものです。 【写真】清八山からは本社ケ丸への縦走登山を見る(全10枚)
いにしえの清八さんの名前を冠した清八山
清八山(せいはちやま)は、清らかな末広がりの山ということでしょうか。どちらかというと富士山の山容こそ清らかな末広がりの山並みですが、一部資料などによりますと、山頂手前の峠名の清八から命名され、その峠名はかつて江戸時代に交通の要衝として荷物の流通に貢献した馬方(馬追い)の清八さんという方の名前を拝借したということのようです。羨ましいですよね、自分の名前が山名になるなんて。 清八山は登山ファンの間では隣の本社ケ丸との縦走で登られることが多いかと思います。山頂へのルートとしてはJR笹子駅からの本社ケ丸の笹子西登山ルートと共通で、笹子追分から東京電力パワーグリッド東山梨変電所の先の登山口からの入山か、本社ケ丸からの縦走となります。これに三ツ峠山からのルートが加わる3択が基本かと思います。ここでは笹子駅からの笹子西ルートで山頂を目指します。
急登の先に広がる富士山と松の日本的様式美なコーデ
笹子駅から国道20号を西へ進み追分の集落から山塊に踏み入ります。マイカー利用なら、国道20号の笹子峠への上り口手前の分岐を左折し、追分トンネルを抜けて標高約900mの変電所まで登ります。変電所先に数台分の駐車スペースがあります。 清八山が、その眺望の割に地味な存在なのは、この登山口までの歩行時間の長さにあるのではないかと思います。駅から登山者カウンターのある変電所登山口まで約90分ほど歩いてなお、そこから正規登山口まで30分続きます。登山口から山頂までが約1時間半前後ですから、駅から山頂までの歩行時間の半分以上が登山口までというなかなかな修行ルートです。 正規登山口はシカ避け防護ネットから踏み入ります。標高約1000mです。登山道は当初は比較的穏やか。2回目のネットから先で急登が待ち構えています。静かなブナやカエデの混交林は沢音に背中を押されながらの登山となり、静かな山行で気持ちのいいもの。急登から時折振り返るとアイコンの変電所が小さくなって見えたりします。そして清八峠に飛び出ます。 峠左手方向に本社ケ丸への稜線。清八山は峠からは5分程度の至近に山頂があります。そこからは大パノラマが広がります。峠からの稜線伝いの先に山頂のため、峠のある北東側は稜線が視界を妨げますが、正面に立つ富士山はもちろん、西側に連なる南アルプスの南嶺が大きく広がって見えます。 そして富士山に微妙にかかる松のアクセント。日本的様式美を感じさせる画角が、清八山山頂のクライマックスです。そのまま下山は役不足かと思います。本社ケ丸の山頂も踏んでの下山をお勧めしておきます。ただし本社ケ丸の下山ルートはハードです。
ソトラバ編集部