大規模漏水から3週間の明治用水頭首工、復旧急ぐ現場をドローン撮影 愛知・豊田
大規模漏水から3週間の明治用水頭首工、復旧急ぐ現場をドローン撮影 愛知・豊田
愛知県豊田市の取水施設「明治用水頭首工(とうしゅこう)」で大規模な漏水が確認されてから3週間が経った6月5日、応急対策が続いている現場を上空からドローンを使って撮影した。
右岸側では160本のポンプで水汲み上げ
頭首工は豊田市を南北に流れる一級河川・矢作川の水を堰き止め、並行する明治用水に取り込むための施設。取り込んだ水は工業用水や農業用水として活用されているが、施設を管理する東海農政局が5月15日、頭首工上流の左岸側で漏水して水が渦巻いているのを発見。それ以降、漏水範囲は拡大し、用水の取水量が大幅に減少してしまった。 こうした事態を受けて東海農政局は、頭首工上流で土のうや土砂によって矢作川の水の流れを取水口のある右岸側に寄せた上で、160本以上の仮設ポンプを設置して水を汲み上げる応急対策を実施。毎秒8トンの取水量を確保し、5月30日から農地にも4日に1回は通水できるようになった。今後、より堅固な構造物を設置して、安定的な取水を維持する方針。
左岸側は土のうで囲むも漏水止まらず
一方、漏水の原因となる「穴」が開いたと考えられている頭首工上流の左岸側では、5月24日から漏水箇所の周囲を土のうで囲んで、できるだけ川の水が流れ込まないようにする対策が始まった。 ドローン撮影した5日午前の時点では、円弧を描くように並べられた土のうの隙間や上部から水が流れ込んできており、どこに「穴」があるのか、映像からは正確な位置がつかめなかった。ただ、頭首工を挟んだ下流側を見ると、1週間前に比べると明らかに水の噴き出し方が弱くなっており、漏水の量はかなり減少しているとみられた。 なお、農水省が設置した河川工学など各分野の専門家らからなる「明治用水頭首工復旧対策検討委員会」の委員長を務める石黒覚・三重大名誉教授(建設材料学)は、大規模漏水が発生したメカニズムについて「(川底の土砂に堰を挟んで水の通り道ができる)パイピング現象が発生したと推定される」とした上で、施設の老朽化が一因であるとの考えも示している。完全復旧の方法や時期は見通せていないという。 周辺道路は車の通行止めの範囲が広げられ、地元の人たちが徒歩や自転車でやって来て、工事の様子を見守る姿が見られた。 (文・関口威人、ドローン撮影・吉田尚弘/nameken)