若者が投票に目覚めるか 投票率で探る大阪の選挙事情
国政への影響力も大きい大阪府知事選、大阪市長選の大阪ダブル選。投票率が気になるところだが、大阪の選挙は投票率にまつわる特色が少なくない。市長選には投票率20%台という冬の時代があった。投票率が高くなっても、若者とシニアの世代別格差が大きい──。投票率の動向から、大阪の選挙事情を探ってみよう。
40年間続いた単独市長選の最低投票率は28.45%
2011年11月、府知事選、市長選挙のダブル選が40年ぶりに実施された。当時の橋下徹知事が市長選へくら替え出馬したことで、同日選が実現した。市長選は1971年11月、同年4月に3選を決めたばかり中馬馨市長の死去に伴い、急きょ前倒しで実施された。以来、市長選は府知事選や市議会議員選挙と日程がずれて連動しないまま、単独で実施されてきた。 71年の市長選から4人の助役経験者が連続して立候補し、市長職を受け継いできた。多数派与党各会派の支持を手堅く取り付けた現職が再選を目指す選挙になると、現職有利は動かしがたく、静かな信任投票に近くなる。事実上の後継指名を受けた新人候補が出馬した場合も、争点らしい争点が見当たらず、選挙戦に盛り上がりが欠ける。 このため、市長選は長らく低投票率で推移した。単独選挙初回の71年市長選の投票率は34.85%。前回ダブル選挙の61.56%から、約27ポイントも急落した。 以降、2007年までに、出直し選挙も含めて10回の市長選が単独で実施された。投票率は一度も50%を越えることがなく、40%が3回、30%台が6回で、最低は28.45%だった。
市長が投票率アップへ「投票用紙に宝くじをつけたい」と珍提案
たとえば投票率が40%の場合、当選者の得票数が7割に達したとしても、有権者全体を見渡すと、当選者に投票した有権者は28%という計算が成り立つ。 せっかく当選をはたしても、就任後の会見で、「市長の得票数は有権者全体の3割にも満たない。それでも市民の信任を得たといえるか」などと、手厳しい質問をぶつけられる。その質問にけわしい表情で答えるのが、大阪市長職の通過儀礼のようになっていた。 当時の現職市長が記者団との懇談会に臨み、昼食を囲みながら選挙戦が話題になった。すると、日ごろは堅実タイプの市長が「なんとか投票率を上げたい。投票用紙に宝くじを付けたら有権者は投票してくれるのではないか」と、切り出した。市長本人はほんのジョークのつもりだったのだろうが、側近が「そんなことをすると、選挙違反になります。やめてください」とあわてて否定したのがおかしくて、ひとしきり周囲の笑いを誘った。 市長自身が気にかけるほど、市長選挙の低投票率が課題になっていたのは事実。長く続いた単独市長選挙が、結果的に大阪人の政治的関心や政治的センス醸成の機会をそいでしまった要因のひとつといえるかもしれない。