「個の時代」に自分をどう売る?「フリーランスの祭典」で感じた「個人が活躍する未来」への手応え
高橋俊介特別審査員賞を受賞したのは長野県のニチノウ食品だ。グリコで長年アイスクリームの開発・マーケティングを担当していたシニアのフリーランスコンサルタントと協業してピスタチオのジェラートを半年間で開発、ふるさと納税のサイト「ふるさとチョイス」のジェラート部門で全国1位を獲得した。
浜田敬子特別審査員賞を受賞したのは、三重県の山二造酢。東京在住の副業人材7名がチームを組み、同社の飲む酢シリーズを「伊勢のクラフト酢」としてリブランディングした。商品開発は得意でも「売る」ことに課題があった同社だが、この協業によって首都圏での販売拡大が実現している。
そして、WEB投票でもっとも票を集めた大賞の受賞者は、ONE Xと大田区役所だった。大企業に所属する若手社会人らが立ち上げたONE Xと大田区役所がタッグを組み、2021年度より「大田区SDGs副業」を始動。町工場や商店街が大田区内外の副業人材と協業し、さまざまなプロジェクトに挑戦しながら持続可能な街づくりをめざす試みだ。これまでに、商店街のアーケードフラッグの有償広告事業化、商店街店舗のデジタルマーケティングなど11の事業を実現している。
スペシャルセッション「個人が活躍できる社会」のために
最後は注目度が高かったスペシャルセッションで語られた、フリーランスのリアルな課題について触れたい。登壇者は、CAMPFIRE 代表の家入 一真氏、声優・ナレーターの榎本 温子氏、アーティストのホンマエリ(キュンチョメ)氏、プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 代表理事、フリーランスPRプランナーの平田 麻莉氏の4名だ。
インターネットの発展により個人が声をあげやすくなり、あらゆることが民主化されるようになった。場所を問わずに仕事ができる環境も整いつつある。一方で、クライアントワークにおいて立場が弱くなりがちなフリーランスは、セクハラやダンピング等の問題に巻き込まれやすい。
例えば、ホンマ氏から指摘があったのは、アートや演劇といった表現にまつわる現場での「ジェンダーギャップ」の大きさだ。ホンマ氏がメンバーとして参加する「表現の現場調査団」では、業界のジェンダーバランスを調べた「ジェンダーバランス白書2022」を発表している。 芸術分野では審査員を務めるのは約70%が男性であり、コンテストなどの受賞者もまた男性が過半数以上を占める分野が目立つ。教育機関にもギャップがあり、例えば美術大学は約75%の学生が女性だが、教授は男性が約80%を占める。学生にとってロールモデルを見つける機会が少なく、卒業後も男女不均衡を「仕方がない」と受け入れかねない懸念があるそうだ。