為替介入でも円安止まらず ネットサービス・新NISAでカネは海外へ
大型連休中の外国為替市場で円相場が乱高下している。政府・日銀による円買いの為替介入があったと見られるが、その後も円安・ドル高基調が続く。今回の円安は日米の金利差が主因だが、為替取引の構造変化も見逃せない。 【関連画像】29日午後、財務省内で円相場について取材に応じる神田真人財務官(右端)(写真:共同通信) 4月26日、日銀は金融政策決定会合で政策金利を据え置いた。会合後の記者会見で、植田和男総裁は「現状の円安なら物価への影響を無視できるか」との問いに対して「はい」と明言した。これで日銀が早期に利上げに動くとの警戒感が後退し、円相場は1ドル=155円台から158円台まで下落した。 29日には34年ぶりに1ドル=160円台を付けた後、154円台まで急騰する場面があった。市場では政府・日銀が円買いの為替介入に踏み切ったとの観測が広がっている。日銀が4月30日に公表した当座預金残高の見通しに基づき、29日の円買い介入が5兆円規模だったとの見方も出ている。 「為替介入があっても効果は一時的だ」。三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ為替ストラテジストの植野大作氏は円安・ドル高基調が続くと見る。こうした見解を裏付けるように、30日(現地時間)のニューヨーク外国為替市場では再び円安・ドル高が進み、1ドル=157円台後半まで下落した。 今回の円安の主因は日米の金利差だ。米国の10年物国債の利回りは4%台後半と昨年11月以来の高水準。一方で日本は0.8%台にとどまる。金利が高い国に投資すると高い利息が得られることから、金利の安い国の通貨を売って高い国の通貨を買う構造的な要因となっている。国内の輸入企業などの実需勢に加え、ヘッジファンドなどの投機筋が円売りを加速させている。 ●強い米経済、利下げ観測が後退 年初時点では、今年は円高・ドル安基調に転じるとの見方が多かった。米国のインフレが最終局面に入り、米連邦準備理事会(FRB)が年内に大きく利下げに転じ、日米の金利差が縮小するとの見立てだ。だが米国経済は強く、足元ではインフレが市場の予想以上に根強いため、利下げ観測が後退している。 米金利先物の値動きから市場の織り込む政策金利の予想を示す「フェドウオッチ」によると、2024年末までの利下げ回数で現在有力視されているのは「1回」と、3月時点の「3回」から後退した。年内の利下げ見送りや再利上げの見方も浮上している。 日銀の金融政策はどうか。3月にマイナス金利を解除し、現在の政策金利は0~0.1%。市場では円安でコストプッシュ型のインフレが進めば、7月にも追加利上げに踏み切る可能性があるとの見方が多い。一方、米国の政策金利は5.25~5.50%と過去最高水準にある。日米10年債の金利差は4%近くまで拡大している。日銀が追加利上げをしても、金利差は大きくは縮小しない見通しだ。