株主提案の取り下げ続々、企業が「物言う株主」アクティビストの要求のむ
6月の株主総会シーズンを前に、アクティビスト(物言う株主)が自ら提案した株主提案を取り下げるケースが増えている。つまり、企業側がアクティビストの要求を受け入ることが増えているのだ。 アクティビストとして知られるストラテジックキャピタルは5月21日、淀川製鋼所と大阪製鐵に対する株主提案の一部を取り下げたと発表した。 淀川製鋼所にはDOE(株主資本配当率)6%など株主還元の拡充や、自己株式の消却など複数の株主提案を行なっていたが、そのうち取り下げたのは「買収防衛策の廃止」についてだ。 ストラテジックキャピタルは「買収されることが経営陣にとって潜在的な脅威として存在するならば、 買収防衛策ではなく、買収されないよう株主価値を高めることが株主にとっては望ましく本来のあるべき姿」だとし、淀川製鋼所の株価が長期的に低迷しているのは、経営陣が株主価値向上の努力を怠っているからだとして、「保身のために買収防衛策を導入しているといわざるを得ない」と、買収防衛策の廃止を求めていた。 ストラテジックキャピタルの提案に対して淀川製鋼所は反対意見を表明する一方で、5月10日、取締役会で買収防衛策の廃止を決定した。同社は、国内外の株主や投資家の意見、経営環境の変化や買収防衛策に関する昨今の動向を鑑みた結果だとしている。 大阪製鐵についてもストラテジックキャピタルは複数の株主提案をし、剰余金の配当を取締役会だけでなく株主総会でも決められるようにすることなどを求めていたが、会社側が同様の提案を6月の株主総会で付議すると公表したため、取り下げるに至った。 こうした企業の対応について、ストラテジックキャピタル副社長の加藤楠氏は、 「複数の株主提案をしていることが多いですが、そのうちの一部を採用していただけることも、多少は増えたかもしれません。ただし、私どもが投資をしている比較的時価総額の小さな会社については、株主価値向上のために提案にあるような改善をより多く実施していただくことを期待します」 と話す。 他にもロンシャン・SICAVが豊田自動織機に求めていた、自社株買いなどの株主提案を撤回したと発表している。 豊田自動織機は今後1年間で1800億円を上限とした自社株買いを行うことや、ROEの向上、株主還元の拡充、政策保有株の売却などの施策を公表しており、それらが「経営陣・取締役会による企業価値向上への取り組みが本気であることを印象付けるもの」だったためとしている。
竹下 郁子