結局、スター選手が多いチームは本当に強いのか?「野球」と「サッカー」で「まさかの違い」が生まれた理由
勝敗を分ける「サンクコスト効果」とは?
タレントが多すぎるとどうしてコンビネーションが落ちるのか、サンクコストの視点から考察します。 サンクコストはすでに払って回収できない費用であり、それを取り戻したいと思う認知バイアス(サンクコスト効果)が知られています。サッカーやバスケでいえば、選手に払っている年俸や選手を獲得するために用いた移籍金・トレード選手のことを指します。 たとえば、レアル・マドリーはベッカムを獲得するためにマンチェスター・ユナイテッドに3,850万ユーロ(当時のレートで48億円)を支払いました。さらに、ベッカムの年俸は7億円程度でした。これだけ大枚をはたいたのだから、活躍してもらわないと困ります。 このサンクコストはベッカムの起用法に大きく影響します。 ベッカムは右サイドハーフ(攻撃的なミッドフィルダー)を主戦場としていた選手でしたが、同ポジションにはルイス・フィーゴという不動のレギュラーがいました。そこでレアルの経営陣はベッカムをボランチ(守備的なミッドフィルダー)にコンバートしたのです。 せっかく獲得するなら起用しないともったいないというサンクコスト効果がみてとれます。 ベッカムは不慣れなポジションに苦戦。攻撃ではセンスを発揮しましたが、崩壊していくレアル・マドリーの守備網を支えることはできませんでした。 なお、本職のボランチであったクロード・マケレレは、自身の守備力が評価されないことに愛想を尽かし、レアル・マドリーから移籍してしまいました。サンクコスト効果にだまされることなくマケレレを評価できていれば銀河系軍団は大成功できていたかもしれません。 このベッカムの例のように、獲得した選手を使わなければならない(サンクコスト効果)と監督や経営陣が思うことで、メンバー選考が歪み選手のコンビネーションが落ちる可能性が考えられます。 同じく、サンクコスト効果によってチーム成績が伸び悩んだ例として、近年のヴィッセル神戸が挙げられます。 2022年までのヴィッセル神戸はイニエスタ(元・スペイン代表)をはじめ、大迫勇也、武藤嘉紀、山口蛍、酒井高徳(いずれも、元・日本代表)等の有名選手を抱えるタレント軍団でした。選手・スタッフの総年俸は60億円近くで、J1ではぶっちぎりのトップでした。 なかでもイニエスタはバルセロナで大活躍した世界が誇るスーパースター。彼を中心にショートパスを主体としたサッカーで戦っていました。 しかし、最高順位は2021年の3位。2020年、2022年は10位以下となり、総年俸のわりには成績が振るいませんでした。