倉田真由美さん、未だに夫の漫画が描けない「一コマ描くのが精一杯です」
漫画家の倉田真由美さんが、すい臓がんを抱えた夫の叶井俊太郎さん(享年56)の闘病について綴ったこの連載エッセイを開始したのは今年1月のこと。2月16日に旅立った以降も「まだまだ夫のことを伝えたい」と執筆を続け、現在も読者から大きな反響が届いている。夫のことを”漫画”に描くときの現在の心境を綴ってくれた。 【画像】倉田真由美さんが夫の闘病を描いた漫画 ペン入れができない描き途中のネーム
執筆・イラスト/倉田真由美さん
漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。お笑い芸人マッハスピード豪速球のさかまきさん原作の介護がテーマの漫画『お尻ふきます!!』(KADOKAWA)ほか著書多数。 夫の叶井俊太郎さんとのエピソードを描いたコミック『夫のすい臓がんが判明するまで: すい臓がんになった夫との暮らし Kindle版』 『夫の日常 食べ物編【1】: すい臓がんになった夫との暮らし』は現在Amazonで無料で公開中。
夫のことを書き残したい
夫がいなくなって半年以上経ちますが、まだまだいくらでも書くことがあります。書き残したい、伝えたいことがあります。 血が繋がった親族とは違い、夫とは血縁関係がありません。配偶者にならなければ、赤の他人だった人です。でも、だからこそ私にとって特別なんですよね。 夫のことは、私の夫じゃなくても好きだったと思います。私が夫を好きなのは、私を愛してくれたとか、大切にしてくれたとか、そういう理由ではないんです。そこに関しては、彼なりにはあったと思いますが、特に強く感じていたわけではありません。「してもらったこと」を思い返して惜しんでいるわけでもありません。 ここは、一昨年亡くなった父や、数年前亡くなった子供の頃世界で一番好きだった祖母とは異なるところです。父や祖母を想う時、「私を愛してくれた」「大切にしてくれた」という、彼らの私に対する愛情がまず一番にあります。でも夫は違います。