拉致被害者家族の蓮池透さんが会見【全文2】
日朝間で動きがありそうなときによくある、拉致被害者目撃情報などについて
記者1:スペインの通信会社でございます。時々、韓国あるいは北朝鮮、あるいは日本のメディアの中で失踪者、あるいは拉致被害者を見たというような報道が出るわけでございます。例えば、田口八重子さんが平壌の街を歩いてたというような報告が載るわけですが、これを信じますでしょうか。それとも誰かが意図的にそのようなうその事実を、何かの理由で出していると思いますでしょうか。 蓮池:私はこれにも書きましたけれども日朝間で何か動きがありそうになる、あるいはあったときに必ず韓国側からそういう目撃情報なり、死亡情報なりが出るんですね。ですからなぜそういうことを、韓国のマスコミはそういう報道をするか、よく分かりませんけれども私はそれを、私はあまりそれを信頼するには値しない情報ではないのかなというふうに思います。ちょっとうがった見方をしますと韓国側が情報を出すことによって、日朝の接近をちょっと妨害しようとしているのかなというような、そういう印象を受けます。ですからにわかには信じがたいということです。 記者2:2つの質問があります。1つは拉致問題が起こったのは、だいたい1970年代だったと思うんでございます。2002年、劇的にその5人が突然に戻ってきたというときまでは、日本の一般の国民、日本の社会っていうのはこの問題にまったく関心を持たなかったという感じがするわけでございます。突然にこういう事実があった、こういう人たちが帰ってきたということで、突然に北朝鮮に、もう許さないという気持ちが社会に醸成されたという感じがするんでございます。しかしながら、20年前は、まったくそのことはドント・ケアだったんですけれども、今は完全にそれに反対のムードになったわけでございます。空気がこういうふうに変わったというのは、どうして起こったと思いますでしょうか。 2つ目の質問でございますが、先ほどのお答えにもちょっと関連するんでございますが、韓国と日本との関係っていうことでございます。日本と北朝鮮がより接近するようになりまして、関係が改善されるということになりますと、韓国との関係はどうなりますのでしょうか。つまり今、朴(パク)大統領も北朝鮮との関係で苦戦しているのではないかと思いますが、安倍首相が北朝鮮にもっと近くになろうとするということになりますと、北朝鮮はどう対応するんでしょうか。どうこの関係は、日韓関係はどうなっていくのだと思いますでしょうか。 蓮池:70年代後半に集中している拉致の事件ですけれども、そこからだいたい24年、四半世紀後にようやく小泉さんが訪朝してその存在が明らかになったわけですけども、私たちにとっては非常に長い時間でした。その間、何度か明らかになりそうな出来事もあったんですけれども、2つ紹介すると1つは大韓航空機の爆破事件。犯人の金賢姫(キム・ヒョンヒ)元死刑囚が北朝鮮で日本人拉致被害者、李恩恵(リ・ウネ)という人に教育を受けたということが明らかになったときです。 もう1つは同じ時期に日本の国会で、なんと当時の梶山静六国家公安委員長が当時、70年代後半に失踪していたカップル3組は北朝鮮による拉致の疑いが濃厚であるという答弁をしているわけですね、国会で。それはわれわれ、マスコミがまったく報道しませんでしたので、われわれは知るよしもなかったです。それを知ったのは2002年以降です。 ですから、そういう、何度かチャンスはあったのもかかわらず延々24年間も引っ張ってきてしまったということで。ですからその2002年以前というのはまったく不思議な国、変な国、アンタッチャブルという国だったというふうに思います。ですから、その分北朝鮮という国に対してはほとんど無関心だったと思いますけれども、2002年以降はちょっと私は変な方向に日本の民意というか、そういうものが右傾化していったんではないかなというふうに思います。でも、それをあおった人は多く、私もその1人だったわけですけれども、それはなぜかと言えば被害者への同情とそれから北朝鮮への怒りという、それの相乗効果によるものだというふうに思っていまして、日本の世論がそういうふうに傾いていくということは、私は今になって考えるとあまりいい状態ではなかったのかなというふうに回想しています。 2つ目のご質問ですけれども、私は日韓関係や、あるいは日中関係を飛び越えて日朝をうまくするっていうのは難しいというふうに考えています。今のように安倍さんはこの前、日韓首脳会談ありましたけども、私の考えでは安倍さんは中国は嫌い、韓国は嫌い、好き嫌いで外交やってるのかっていうふうに私は感じていました。ですから私は日韓関係の整備というか正常化というか、日韓もうまくやる、あるいは、そして日中関係も良好にしておくというそういう背景がなければ、日朝関係をうまくできるわけがないというふうに考えていますので、ぜひ日中関係、中国の脅威をあおるだけではなく日中関係も良好にしていただいて、それから日韓関係も良好にして、そういう状況を整えておかなければ日朝関係もうまくいくわけはないというふうに考えます。