MotoGP 2023年のホンダ『日本メーカー vs 欧州連合の構図になっていた』【インタビュー後編】
日本という国そのものが抱える課題と向き合う日本企業
スイートスポットの狭さがここ数年の課題になっていた。でも、コロナ禍で気づかされたのはヨーロッパメーカーの地政学的な強みだったという。個別メーカー間のライバル関係では済まない、二輪文化が根付いているかどうかの違い──。「世界トップに君臨する日本メーカーが、なぜ勝てないのか」の答えは簡単なものではなかった。 【写真】2023年型ホンダ「RC213V」に関連する50枚の画像
自分たちが思っていたレベルにはまったく達していなかった
ヤマハへの取材を終えて、拭えない疑問が残った。「なぜ日本メーカーが、ヨーロッパメーカーに勝てないのか」という根本的な疑問だ。ヤマハの関は、「日欧では、仕事のプロセスが違う。どちらがいい、悪いという話ではない。日欧それぞれの良し悪しを見極めながら、ヤマハにとってベストな『いい所取り』をしていきたい」と語った。 だが、’23MotoGPの戦績だけに注目すれば、「いい、悪い」の結論ははっきりとしている。全20戦中、ドゥカティ17勝、アプリリア2勝、ヤマハ0勝。そして、もうひとつの日本メーカーであるホンダは──。 ホンダのシリーズランキング最上位は、マルク・マルケスの14位だった。史上最強ライダーとされるマルケスでさえ、スプリントレースを含めて全40回設けられた表彰台には、3位の位置に4回立っただけだ。サテライトチームのアレックス・リンスが辛うじて1勝を挙げたものの、ホンダのファクトリーチームは強さと存在感を示せなかった。 「基本的には今までと同じシーズンになってしまいましたね。何かいいアイテムを見つけて、それを飛躍につなげて……ということをターゲットに’23シーズンを戦ってきました。もちろん、これまでの不発を踏まえてやり方は変えてきたつもりでしたが、自分たちが思っていたようなレベルにはまったく達していなかった」と語るのは、ホンダ・レーシング二輪レース部レース運営室長の桒田哲宏だ。 ──【左】ホンダ・レーシング二輪レース部レース運営室長 桒田哲宏氏/【右】ホンダ・レーシング二輪レース部開発室長 佐藤 辰氏 「そのことには、シーズン途中から気付いていました。『このままの延長線上で行っても、自分たちが立ちたい位置には届かない』と。だから『何か考え直さないといけないんじゃないか』『大きな忘れ物が、どこかにあるんじゃないか』と思い始めていたんです。’23年は、ある意味ずっと考え続け、反省し続けたシーズンでもありました。シーズン内でベストのリザルトを求めることはもちろんですが、一方で、’24年に向けて何をやるべきかも考えていた」