「まわりの目を気にせず横になりたい」 理工系大学の女子トイレの奥に、女性専用の安らぎスペース
アイデアでセキュリティーも確保
こうした課題や要望を踏まえて決まったコンセプトは、「東工大女性の毎日を支える、安らぎのあるエッセンシャルスペース」。設置する際に優先したのは、セキュリティーの確保でした。 「この点はかなり議論して、女子トイレを経由しなければ、リフレッシュスペースに入れないような設計にしました。つまり女子トイレを利用する人でなければ、中に入ることができません。入り口はわかりにくいのですが、それよりもセキュリティーを優先しました」 また、どこでも横になれるように室内は靴を脱いで上がる畳敷きにし、テーブルやデスク部分は掘りごたつ式になっています。
東工大の大学院生が設計
設計は環境・社会理工学院の修士課程2年(当時)の女子学生が担当しました。デザインには、本館の特徴であるアーチ形のモチーフを取り入れています。 例えば、着替えや授乳ができるスペースの入り口にはカーテンがあり、プライバシーが守られるようになっています。 リフレッシュスペースの手前にある女子トイレもリニューアルし、デザインに統一感を出しました。 設置後、学生や教職員からの反応はどうだったのでしょうか。 「多くの女子学生が自由に利用し、『リフレッシュスペースができてよかった』という声が上がっています。意外だったのが、ここで自習する学生が多かったことです。というのも、キャンパス内には図書館をはじめ自習できるスペースがたくさんあり、学内で自習することは普通のことになっているからです。女性専用スペースでは、周りの目を気にせずに勉強に集中できるのかもしれませんね。今後も利用者である学生や教職員の声を拾いながら、さらに使い勝手のいいものにしていきたいです」 リフレッシュスペースは、構想が立ち上がってから約1年というスピードで完成しました。新しい設備は費用面がハードルになり、時間がかかることがありますが、同プロジェクトは「女性活躍応援キャンペーン」として寄付金を集め、費用の一部に充てました。 「キャンパス内の一部の女子トイレや多目的トイレでは生理用品の提供をしているのですが、これも女子学生からの要望によって決まりました。東工大は現場から意見を吸い上げるボトムアップがスムーズにできていると思います」 当事者の声を反映し、さまざまな人を巻き込みながらプロジェクトを迅速に進める環境こそが、ダイバーシティ実現への近道といえそうです。
朝日新聞Thinkキャンパス