鹿児島県・伊仙町で伝統の「サタタキ」始まる 芳醇な香り漂わせ季節の移ろい告げる
【徳之島】徳之島南西部の伊仙町犬田布の県道沿いにある徳南製糖工場(南郷秀一代表)では29日、手作業で収穫されたサトウキビを原料に古来の伝統製法を受け継ぐ「純黒糖」づくりが始まった。独特の芳醇な甘い香りと湯気を漂わせ、住民や往来のドライバーたちに製糖シーズンと師走への季節の移ろいを告げている。 同製糖工場は1968(昭和43)年に現在地に創業。機械化が進む中にあってキビ生産農家らが手作業で一本一本を丁寧に収穫協力した原料を買い入れて圧搾。300年近い伝統の「サタヤドリ」(砂糖小屋=砂糖たき小屋)方式で、豊富なミネラル分を含んだ搾汁をひたすら煮沸し濃縮、熟練技で仕上げる「純黒糖」にこだわり続け半世紀余になる。 南郷代表(73)によると、今期産キビの作柄は同日現在で「昨年より生育が良好。降雨の影響でブリックス糖度は19度台(平年は20度強)とやや遅れ気味で今後の回復に期待」。だが製糖初日は「ニシ(北風)が吹き始めて気温も下がったため(同日最低16・1度)、とても甘くておいしい黒糖の立ち上がりとなった」と笑顔を輝かせた。 「純黒糖」の出荷先は、黒飴やかりんとう、ようかんなどの銘菓でおなじみの和歌山県内の大手老舗製菓会社が主。アジア太平洋地域に関する学術誌「アジア・パシフィックジャーナル」(2023年12月号)に、「黒砂糖を多く摂取する人は全てのがんリスクが40%以下に」などとする共同研究の成果が掲載されたこともあり、引き合いが増えているという。 菓子原料用のほか「徳之島さとうきび100%、純黒糖、開封後要冷蔵」などシンプルなパッケージで直販もしている。操業は4月上旬頃まで。徳南製糖(電話0997・86・9010)。