東海地震と富士山噴火の連動は国家喫緊の課題/205 「鎌田浩毅の役に立つ地学」
被害総額220兆円が予想される南海トラフ巨大地震の発生が警戒されているが、同様に50年近く警戒されてきた東海地震が南海トラフ巨大地震に含まれる事実は意外に知られていない。東海地震が起きると東海地域から首都圏まで甚大な被害が出るだけでなく、日本最大の活火山である富士山の噴火を誘発する可能性がある。 南海トラフは静岡県沖から宮崎県沖まで続く水深4000メートルの海底にある凹地だが、北側には三つの「地震の巣」があり「震源域」と呼ばれている。それぞれ東海地震、東南海地震、南海地震を起こした場所で、一部は陸地にもさしかかる。 古文書からひもとくと、南海トラフ沿いに巨大地震と大津波が約100年おきに発生したことが分かっている。そして、3回に1回は東海、東南海、南海の三つの震源域が同時に活動する「連動型地震」で、次回はこの連動型地震の番に当たっており、総人口の約半数の6800万人が被災すると予測されている。 このうち、最も東で起きる東海地震は富士山の直下20キロメートルにあるマグマだまりを刺激する。実際、1707年には南海トラフ巨大地震の一つである「宝永地震」の49日後に富士山が大噴火し(「宝永噴火」と呼ばれる)、それ以来300年以上もマグマが地下でたまり続けている。 ◇「宝永」は三つ連動 南海トラフ巨大地震はフィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界が急激にずれることによって発生する。強い地震波を発生させるだけでなく、日本列島へのひずみのかかり方を劇的に変化させる。この変化が富士山のマグマだまりを膨張させる方向に働いた場合には、マグマだまり内で圧力が急に下がる。 その結果、マグマ中に5%ほど溶けている水が減圧によって急激に泡立ち水蒸気となる。「発泡」と呼ばれる現象で、炭酸飲料のビンを勢いよく振ると中の液体があふれるように、地上からのマグマの噴出を促す。逆に、地震の強い揺れがマグマだまりを急激に圧縮させた場合には、マグマ内部の圧力が増加することによって、マグマが地上へ向けて絞り出される。