東海地震と富士山噴火の連動は国家喫緊の課題/205 「鎌田浩毅の役に立つ地学」
こうしたマグマだまり周辺の地盤に対して、膨張もしくは圧縮を起こす急激な地殻変動は、現在「噴火スタンバイ状態」にある富士山の噴火を誘発する危険性をはらむ。宝永地震では東海、東南海、南海の三つの震源域がほぼ同時に(数十秒で)活動し、マグニチュード(M)9クラスの巨大地震となった。 発生時期が2035年±5年に予測されている南海トラフ巨大地震も同じ規模(M9.1)だが、重要なポイントは次回は東海地震がほぼ確実に起きることである。前回の1944年(昭和東南海地震)と46年(昭和南海地震)では東海地震の震源域だけが動かず、その分のエネルギーが地下でたまっているからだ(本連載の第16回を参照)。 南海トラフの東端にある「駿河トラフ」は、北方で上陸した後、活断層の「富士川河口断層帯」につながっている。そのわずか20キロメートル北に富士山頂があり、東海地震のエネルギーを伝えやすい状況にある。東海地震と富士山噴火の連動を国家喫緊の課題として早急に対策を行う必要がある。 ■人物略歴 かまた・ひろき 京都大学名誉教授・京都大学経営管理大学院客員教授。1955年生まれ。東京大学理学部卒業。専門は火山学、地質学、地球変動学。「科学の伝道師」を自任。理学博士。