“カリスマ美容師”は令和に必要なのか? SNS活用必須、“個の力”高まり「技術がなくても売れてしまう時代になった」
“カリスマ美容師”が社会現象となった平成(1990年代後半~2000年代前半)。実力とセンスを兼ね備えた気鋭の美容師が人々を魅了し、メディアで注目を集め、サロン業界を活性化させていった。木村拓哉主演のドラマ『ビューティフルライフ』により、“カリスマ美容師”がエンタメコンテンツとしても注目。様々なトレンドを生み出し「この髪型が流行る」といえば、皆が模倣する時代があった。一方、近年は美容師の人材不足に注目が集まり、海外に比べて施術の金額が安いことから美容業界の構造にも関わる課題も浮き彫りに。SNSで個人として発信することが前提となるいま、美容師像はどう変化しているのか? ミシュランガイド「カミカリスマ」受賞美容師の桑原大貴さん(@taiki0726)に聞いた。 【ビフォーアフター】いじめで不登校「顔を隠す少年」が激変、美容師が変えた外面&内面、驚きのイケメンくんに
■“箱推し”は皆無? 美容師も“個”の時代に…SNSの活用や自己プロデュースの重要性
――桑原さんが美容師を志したきっかけについて教えてください。 【桑原大貴】木村拓哉さんの『ビューティフルライフ』が放送された頃、僕はまだ小学生でサッカーばっかりやっているような少年でした。ただ祖父母、また両親ともに美容師で、僕の髪も両親に切ってもらう家庭でしたのでごく自然な形で専門学校へと進学。卒業し、美容師となりました。ちょうどその頃“カリスマ美容師”ブーム真っ只中であり、僕もメディアに多く露出している“カリスマ美容師”がオーナーを務める美容室で働き始めます。それから現在。美容業界のトレンドは大きく変わりました。 ――どのように変わったのでしょう? 【桑原大貴】まず大きく変わったのがSNSの発展により、お客様が“有名美容室”という箱から美容師“個人”を選ぶ時代になったことです。僕が入った当時は、“有名美容室”にファンがつき、そこで働くことだけでも人気美容師となれました。ですが今の時代は、SNSなどでの展開の仕方次第で、美容師になって1~2年で月100万を稼ぐことも可能に。以前は年功序列が強かったので、考えられなかったことです。 ――“個”の時代へ、そしてSNSでの発信も必須となった。 【桑原大貴】そうです。ただ逆に30代になっても社会人の初任給ぐらいしか稼げない美容師も大勢います。これは僕がオーナーを務める美容室『C-crew』でもそうなのですが、やはり業界の構造的に美容師は労働時間やその大変さの割に給料が安い。僕自身もこの構造を変えようと少しずつ給料を上げていますが、そこにはやはり限界があり、僕も従業員たちにSNSなどを駆使し、自身の得意分野を押し出すことを推奨しています。また美容自体のトレンドも変化しているので、それに基づいた指導も行います。 ――どのように変化したのでしょう。 【桑原大貴】2000年代から2010年代までは、髪型を決める価値基準となっていたのは『ヘアカタログ』でした。“髪型”そのものに注目が集まっていた時代です。あの頃をご存知の方ならわかると思いますが、ヘアカタログは基本、バストショットです。つまり“人気の髪型”があった。ですが現在はその人がどのようなファッションを好むか、どのようなスタイルの人なのか、それらを含め、トータルコーディネートの一部として“髪型”がある時代になりました。 ですから僕もアシスタントの子たちがウィッグなどを使用して練習する時に「今日はこういうスタイルで」とイメージ写真を持ってきたとしたら、「この写真はジャンルで言ったら何に見える?」と尋ねるところから始まります。クラシックか、エレガントか、モードか、ヒッピーか、グランジか。この巻き方は何年代か、どの時代、ジャンルの雰囲気やどんなファッションで形作られているかというところまでイメージさせるよう伝えます。