専門性が必要なのに…学校管理職にはびこる誤解「少人数の特別支援学級なら…」。担任の5人に1人は未経験者、現場は試行錯誤を繰り返す
発達障害の子どもたちへの指導や支援を含めた特別支援教育がスタートして今年で18年目となる。学校関係者や保護者らに広く知られるようになり、特別支援学級などで学ぶ児童生徒は急増。教員不足や学びの質といった課題も見えてきた。鹿児島県内の現状を報告する。(シリーズ・かわる学びや@鹿児島~特別支援教育の今=10回続きの③より) 【シリーズ「特別支援教育の今」を初回から読む】まさか自分の子が…かつて無理解だった特別支援学級は今、急速に増える。上限8人の小所帯。「ここが、この子の居場所」
特別支援学級(支援級)担任の5人に1人が未経験者-。鹿児島県教育委員会によると、2024年度の県内公立小中学校・義務教育学校の支援級担任1994人のうち、414人が特別支援教育の経験年数がゼロだった。3年以下が全体の55.1%に上った。 支援級には、複数学年の児童生徒が在籍することが多い。障害の程度や学習の進み具合も個人差が大きく、高い専門性と経験が助けとなる。だが、支援級の急増によって教員育成が追いついていないのが現状だ。 全校的な支援体制も不可欠とされるが、管理職への理解が行き渡っているかは疑問符が付く。「通常学級は任せられない教員でも、少人数の支援級なら…」。こうした誤った考え方が、現場に残っていると指摘する専門家や教員もいる。 ◇ 教員の専門性をいかに高めていくのか。県総合教育センターは昨年度から、支援級での効果的な指導方法を構築するため、授業モデルの研究を進める。県内4校の教員にも協力をもらい、本年度中に完成させる予定だ。
鹿屋市の鹿屋中で、知的障害学級を受け持つ山元貴恵教諭(49)も協力者の1人。10月中旬、「私のトリセツ」と題した自己分析の授業では、生徒が全体の見通しを持って取り組めるよう、最初に活動内容と時間配分を黒板に明記。さらに教諭自身の具体例を示すなど工夫を凝らした。 同僚の力も借りながら、生徒各人の実態に合った時間割の調整に心を配る。悩みは教材研究に割ける時間が限られることだ。通常学級の家庭科も受け持ち、支援級に専念できるわけではない。「一人一人に配慮するには準備が欠かせない。いつも葛藤を感じている」 ◇ 外部の助けを借りる学校もある。薩摩川内市の川内南中は昨年度から、教員だけでは目が行き届かない生徒の見守りを、学校支援ボランティアが受け持つ。40~60代の女性6人が週1、2時間ずつ、支援級の生徒だけでなく、通常学級で学習内容の理解が難しい生徒たちもサポートする。 9月下旬、月曜担当の火野坂薫さん(65)は、社会の授業に入った。学校から依頼された生徒3人が歴史上の人物を調べる様子に目を配り、戸惑っている子にはヒントを出すなどして背中を押す。気分が乗らないなど教室に入れない生徒がいれば、話し相手になることもあるという。
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