43回防御率ゼロを続けた智弁和歌山のエース右腕・渡邉が、「忘れ物」を取りに甲子園に挑む【この秋輝いた球児たち】
高校2年生とは思えない、ガッチリとした体格の右腕が、この秋の近畿大会で輝きを放った。和歌山の秋を制した智弁和歌山の背番号1、渡邉 颯人投手(2年)が、準決勝までの3試合に先発し、防御率0.00をマーク(3失点)。安定感抜群のマウンドでチームを準優勝に導いた。 【一覧】渡邉の和歌山、近畿大会の投手成績 右足にしっかり体重を乗せ、やや右腕を担ぎ気味にしながら、上からしっかりたたくように腕を振る。直球の最速は143キロ。180キロ、90キロの体を精いっぱい使って、パワフルな投球を見せる。変化球は大きなカーブとスライダーが中心で、カーブは100キロ台と、緩急をつけられている。 さらに投球術も兼ね備える。走者がいない時は、テンポよく打者と対戦。捕手からの送球を受けると、すぐに投球プレートに右足をかけ、セットポジションからモーションに入る。カウントで追い込むと、グラブを胸に置いたまま、しばらく投球しないなど、「打者との間合い」で緩急をつけることも行っている。勝てる投手になりたいという本人の気持ちも、こんな工夫にもつながっているのだろう。大きな体とは裏腹な「器用さ」もある。 この秋は、和歌山大会2次予選3試合すべてに先発した。20回を投げて1点も取られなかった。三振をどんどん取るのではなく、打たせて取る。準決勝の日高戦では7回で1安打しか許さなかった。県内では「無敵」を誇った。 近畿大会に入ってからも3試合で失点3ながら自責は0。先発した決勝の東洋大姫路(兵庫)戦の3回に失点を許すまで、この秋は和歌山2次予選、近畿大会と、43イニング防御率ゼロを続けて見せた。 この夏、甲子園のマウンドを経験した。初戦の霞ケ浦(茨城)戦に、0対3で迎えた6回から2番手として登板。9回までゼロを並べ、味方の同点劇を呼んだ。延長タイブレークになっても10回を無失点に抑えたが、11回に2点を許して敗戦。悔しさが残る、あのマウンドへ。出場へ大きく前進している来年春のセンバツでは、たくましくなった姿を見せるつもりだ。