バイクの電脳「ECU」は、やることがテンコ盛り!?
2000年代の中頃には、パワーモードやライディングモードと呼ばれる、エンジンのパワーや特性を選べる電子デバイスが登場します。これはECU内に書き込まれた複数の燃調マップや点火マップを切り替えることで行なっていますが、コンピューターを用いたデジタル制御だからこそ可能と言えます。 さらには排気特性や騒音をコントロールする排気デバイス、クラッチやスロットルの操作なしでシフトアップできるクイックシフター、後輪の空転を検知してエンジンのトルクを調整するトラクションコントロールなども、ECUが受け持つようになりました。 そして2000年代後半には、スロットル操作を電子制御するライドバイワイヤ方式が登場したことで、いっそうエンジン制御が緻密になります。と同時に、シフトダウンにも対応する双方向クイックシフター(シフトダウン時に回転数を合わせるスロットルの空ブカシ=オートブリッパーを装備)など、さらにECUの仕事は増えていきます。 他にも、続々と増えてきたカラー液晶ディスプレイのメーター表示や、盗難抑止装置などもECUによってコントロールされています。
互いが繋がっている、同じ名前(?)の重要パーツ
エンジン関連の制御や電子デバイスの進化はECU無くして語れませんが、じつは同じECUという略称ながら異なる制御コンピューターが存在し、こちらは「Electric Control Unit(エレクトリックコントロールユニット)」になります。
たとえば、ABS(アンチロックブレーキシステム)は独自のECUを装備しています。また電子制御式サスペンションも独自のECUによって作動します(SCU=サスペンションコントロールユニットと呼ぶ場合もアリ)。 そして略称が同じなので少々ややこしいですが、エンジン制御や各機器のすべてのECUは、「CAN(Controller Area Network)」と呼ばれる通信ネットワークで接続されていて、互いが検知したデータやその時のバイクの状態、ライダーの操作などの情報を共有することで、より緻密で自然な制御やアシストを行ってくれます。 というワケで、バイクのECU(エンジンコントロールユニット)は、点火制御や燃調制御のみを行っていた四半世紀ほど昔と比べると格段に仕事量が増えています。 またエンジンのみならず、ブレーキやサスペンションなどと連携しつつ1/1000秒単位でコントロールするために、内蔵するコンピューター(CPU)の処理速度の速さも重視されるようになっています。
伊藤康司