バイクの電脳「ECU」は、やることがテンコ盛り!?
点火制御から始まった、エンジン専用のコンピューター
現行バイクなら原付スクーターからスーパースポーツまで、搭載されているのが当たり前の「ECU」は、「Engine Control Unit(エンジンコントロールユニット)」の略称で、ザックリ言えば、エンジンを制御するための専用コンピューターです。 【画像】「ECU」の画像をもっと見る(9枚)
ECUという名称が一般化したのは、多くのバイクでエンジンへの燃料供給がキャブレターから電子制御式燃料噴射(FI)に移行した1990年代後半~2000年代前半頃と思われます。しかし、ECUの前身はもう少し早く登場しており、最初はエンジンの“点火タイミング”を制御するパーツでした。 バイクのエンジン(内燃機関)は「吸気→圧縮→爆発(燃焼)→排気」の行程を繰り返して回転します。ガソリンと空気をキャブレターによって「混合ガス」を作り(かつてはキャブレター、現在はFI)、その混合ガスをエンジンが吸い込んで圧縮したタイミングで点火プラグに火花を飛ばして着火・爆発(燃焼)させていました。 ここで問題になるのが“点火のタイミング”です。たとえばエンジンを高回転でスムーズかつパワフルに回すには、シリンダーの中で混合ガスが燃え広がるスピードを考慮して、アイドリングのような低回転の時よりも、点火のタイミングを早める必要があります。 1970年代頃までは機械的に制御していましたが、1980年代頃には電気・電子的に点火タイミングを制御するようになりました……が、まだアナログの範疇でした。 そこで点火タイミングをエンジンの回転数とスロットルの開度や開ける速度に応じて緻密にコントロールするための「点火マップ」をプログラムして、デジタル制御したのが最初のECU的な装置です。
ちなみにホンダは「PGM-IG」(電子制御点火装置)という名称でしたが、他メーカーでは“マイコン方式”という懐かしい名称で呼ぶこともありました。 そして前述したように、2000年頃に燃料供給がキャブレターからFIに置き換わったことで、ECUは必須の装備になりました。 キャブレターは単体で物理現象によって混合ガスを作っていましたが、FIはスロットルの開度やエンジン回転数を元に作った「燃調マップ」のプラグラムに応じて、インジェクターがガソリンを噴射するからです。この時点でECUは、点火の制御と燃料噴射の制御の両方を行なうようになりました。