社会保障を巡っては、関西6小選挙区で初めて直接対決している維新と公明が火花を散らした。

維新は公約で、低所得者らの所得を保障した上で、高齢者の医療費窓口負担を原則3割に引き上げ、現役世代の保険料負担の軽減を図るとする。吉村氏は少子高齢化を踏まえ「現役世代が活躍しないと高齢者を支えられない」と問題提起した。

一方、公明は、後期高齢者の大半が現在1割負担で、急激な負担増は受診控えを招くと批判。山口氏は「早期発見・治療のために健康保険はある。それを諦めたら（病気は）ひどくなり、医療費もかさむ。あべこべの政策だ」と切り捨てた。

共産党は70歳以上の医療費の窓口負担を一律1割にすると主張。れいわ新選組は社会保険料を国庫負担で引き下げるとし、社民党は75歳以上の医療費負担を1割に戻すとする。

外交・安保については議論が深まらなかった。26日、大阪市内でマイクを握った自民の高市早苗前経済安全保障担当相は食料安保やエネルギー安保などに触れ「外交、防衛、経済、技術と総合的な国力を強くする最後のチャンスだ」と強調した。

立民の辻元氏は「防衛費より農業にかける予算を倍増した方が日本は強い国になる」と訴えた。共産党の山下芳生（よしき）副委員長は26日、堺市内で「日本が軍事同盟を強めれば、周りの国も軍事を強める。誰も望まない戦争の危険が高まるだけで、その先に平和はない」と語った。参政党は土地や森林など外資買収の実態把握と規制強化を進める公約を掲げる。

12日間にわたる選挙戦は26日で終了。政治とカネ問題が前面に出て、本来の政策論議が見えにくくなった面は否めない。（石橋明日佳）

■村田晃嗣・同志社大教授（安全保障政策論）

今回の衆院選は石破茂新政権の信を問う選挙であり、自民党の派閥パーティー収入不記載事件を巡る「政治とカネ」の問題を野党側が追及するのは当然のことだ。

ただ、衆院選の直後には米大統領選が控え、ロシアのウクライナ侵攻や中東紛争も続き、国際情勢は混迷を極めているが、日米関係のあり方や目指す外交・安全保障など、本来行われるべき論争が後退している。