「最後の3年」安倍首相 性急な改憲議論に立ちはだかるハードル
続く「安倍一強」の功罪
想定外の事態がなければ、今後しばらく安倍政権が続く。今回の地方票の結果からみると不安定要素はあるものの、来年の参院選を無事乗り越えれば、同年8月には佐藤栄作元首相を抜いて戦後第1位の長期政権となる。同11月には戦前も含めて憲政史上第1位の桂太郎元首相を抜く。そこで最後に、「一強」政治の功罪についてまとめておこう。 まず「功」だが、強力で長期に存続する政権は、外交や経済では有利となる。外交面での安倍首相のプレゼンスは大きい。かつては毎年首相が交代していたため、海外では日本の首相の名前すら覚えてもらっていなかったことを考えると、これは大きなメリットである。経済についても、政治の安定は成長の条件である。政権や政策が頻繁に大きく振れるようでは、企業は安心して投資できないからである。 一方、「罪」についていうと、政治的競争が欠如すると民主政の活力が低下することが挙げられる。1990年代までの日本政治は、自民党一党優位だったが派閥間の競争(党内競争)が活発だった。2000年代は民主党が成長したことにより二大政党制に近い状態が出現し、政党間競争が活発となった。 しかし現在は、野党が分断されており政党間競争が不十分である上に、今回の総裁選に見られるように党内競争もあまり活発でない。どのように政治的競争を回復させ、民主政の活力を取り戻すかが、今の日本政治の課題である。
------------------------- ■内山融(うちやま・ゆう) 東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は日本政治・比較政治。著書に、『小泉政権』(中公新書)、『現代日本の国家と市場』(東京大学出版会)など