「金利のある世界」に浮足立つな 堅実な老後のためにはまず住宅ローンの返済を これから 100歳時代の歩き方
日本銀行がマイナス金利政策を解除し、「金利のある世界」が17年ぶりに戻ってきた。借入金の金利負担が増すなど暮らしへの影響が予想されるなか、老後資金をどう確保していけばいいのか。専門家は「過度に恐れる必要はない」と指摘するものの、住宅ローンを早期に返済するなど、先々を見据えた資産と負債の〝棚卸し〟が必要になりそうだ。 【グラフでみる】住宅ローン金利の推移 金利が戻った際の老後のデメリットとして、ニッセイ基礎研究所金融調査室の福本勇樹室長は「住宅ローン」を挙げる。「利上げとなれば、定年間近になって住宅ローンが残っている人は苦しい。繰り上げ返済を進め、早く残高を減らすことが重要だ」と指摘する。 住宅ローンは一定期間または完済まで金利が同じ固定型と、半年ごとに金利を見直す変動型がある。マイナス金利解除は特に変動型に影響する。変動型は銀行が業績の良い企業に貸し出す際の金利(短期プライムレート)がベースで、短プラは日銀の政策金利に影響されるためだ。 近年、銀行の金利引き下げ競争で変動金利は0・3%前後と、1%台が多い固定金利に比べて圧倒的に低く、住宅ローンを借りる人の約7割が選んでいる。仮に変動金利が0・1%上昇すると、3500万円を35年ローンで借りた場合の返済総額は70万円程度増えるといわれ、影響は大きい。 しかし主要行の短プラは、日銀が政策金利をさらに引き上げるまで現行水準(1・475%)で据え置かれるとの観測が強い。変動金利が歴史的に低い現在、固定型に変更する緊急性は低いとされる。ただ、返済負担が増す前に、退職金を使うなどしてローン返済を進めるのは金利上昇の備えになる。 ■リスク少ない資産が6割 一方、金利の上昇にはリスクの少ない金融資産の増加というメリットもある。 金融広報中央委員会の調査(令和5年)によると、保有金融資産のうち預貯金が4割と最も多く、「安全資産」とされる生命保険(貯蓄型)と個人年金保険を合わせれば、リスクの少ない資産が6割を占める。 日銀が一昨年から金融緩和策を段階的に修正して長期金利が上昇していた影響で、定期預金金利は既に上がっていたが、今後は普通預金にも動きが波及する。生命保険も契約者に約束する利回りが上昇し、保険料が安くなると期待される。