世界スマホ市場、ようやく回復も25年以降は成長鈍化
米調査会社のIDCは、2024年の世界スマートフォン出荷台数が前年比6.2%増の12億4000万台に達するとの予測を発表した。新興国市場と中国で低価格モデルが急速に普及していることが主な要因だという。 ■ 力強い成長も25年以降は逆風に直面 世界スマホ出荷台数は過去2年間急激な減少が続いていた。とりわけ23年は前年比3.2%減の11億7000万台と、過去10年で最低の出荷台数だった。その主な要因は、インフレなどマクロ経済の問題や年初における需要の低迷だった。 一方、24年は端末のアップグレードに対する潜在需要が後押ししており、力強い成長がみられる。ただし、25年以降は成長が鈍化し、23年から28年までの年平均成長率(CAGR)は2.6%と、低水準にとどまる見通しだ。その要因として、スマホ普及率の上昇、買い替えサイクルの長期化、そして急速に成長する中古スマホ市場という逆風が挙げられる。 24年は米グーグルの基本ソフト(OS)「Android」を搭載する端末の出荷台数が前年比7.6%増加する見通し。Android端末は低価格端末を中心に、アジア太平洋地域、中南米、中東・アフリカ、中国で伸びている。 対照的に米アップルの「iOS」は0.4%増にとどまる見通しだ。IDCによると、アップルはインドのような新興国市場で記録的な業績を上げているものの、中国や米国、欧州といった規模の大きい市場で課題に直面している。
■ 中国市場の外資系スマホ44.2%減 アップルは中国市場で苦戦しているようだ。先ごろ、中国政府系シンクタンク「中国情報通信研究院(CAICT)」のデータから、24年10月の中国における外資系スマホブランドの販売台数が、前年同月比で44.2%減少したことが明らかになった。 CAICTのデータを基に英ロイター通信が計算したところ、1年前の外資系ブランドのスマホ販売台数は1114万9000台だった。これが24年10月は622万台に減少した。CAICTのデータはアップルについて言及していないものの、同社は外資系企業として同国最大のスマホメーカーであるため、この販売台数は同社の実績とほぼ同義であると考えられる。 アップルは24年9月に最新スマホ「iPhone 16」シリーズを発売したが、中国語対応の生成AI(人工知能)機能は25年以降に提供される予定である。中国で「Apple Intelligence(アップルインテリジェンス)」を搭載するには、その基盤技術である大規模言語モデル(LLM)が中国当局の承認を得る必要があるが、まだそのめどはたっていないとみられる。 ■ 生成AIスマホ、早期の買い替えは限定的 一方、生成AIの搭載がスマホの販売に及ぼす影響について、IDCシニアリサーチディレクター、ナビラ・ポパル氏は「(生成AIは)まだ需要に大きな影響を与えたり、早期の買い替えを促したりするまでには至っていない」と指摘する。 「生成AIは今後数年間で(スマホの)ユーザー エクスペリエンスに革命を起こすと考えられるが、消費者の認知度を高め、『必須』と思わせる機能を導入するためには、さらなる投資が必要だ。そのような機能が登場すれば、多くの消費者に受け入れられ、誰もが待ち望むスーパーサイクルが生まれるだろう」(同) IDCは生成AI搭載スマホの今後の動向について、「当面、高価格帯の旗艦モデルで展開され、その後価格帯を下げながら普及していき、28年までにスマホ市場全体の70%を占めるようになる」と分析する。
小久保 重信