大学生の就活時期、どう変わる?
安倍晋三首相は4月、経団連の米倉弘昌会長ら経済界トップとの意見交換会で、大学生の就職活動の解禁時期を現在より3カ月遅らせ、「大学3年生の3月から」とするよう要請しました。大学生の就職活動はこれからどう変わるのでしょうか。
海外留学を後押しするねらいも
現在、経団連の倫理憲章には、会社説明会などの広報活動は大学3年生の12月から、面接などの選考活動は大学4年生の4月からと規定されています。今回の要請を受け、経団連はこの倫理憲章を改定し、広報活動を3月から、選考活動を8月からにそれぞれ遅らせる方針です。 こうした見直しの背景には、就職活動の開始時期が3年次後期の授業・試験期間と重複しており、大学教育に支障が出ている現状があります。「就活優先」による学力低下については、これまで大学関係者からもたびたび懸念の声が上がっていました。 また、大学生が海外留学しやすい環境をつくるねらいもあります。アメリカの国際教育協会(IIE)の調査によれば、アメリカの大学に在籍する日本人留学生数は2011年12月時点で19,966人。2001年2月時点では46,810人だったので、この10年間で約57%も減少しています。その原因のひとつに、3年の後期に留学すると会社説明会などの開催に間に合わず、就職に不利になってしまう現状があると見られています。政府は、就職活動時期の後ろ倒しによって帰国後の就職への不安を払拭し、海外留学を後押ししていく考えです。
「抜け駆け」でルール形骸化の懸念
今回の要請については、経済界の中にも異論があります。新経済連盟の三木谷浩史代表幹事(楽天社長)は、「外資系に優秀な人材を採られるのではないか」と述べ、同連盟の会員企業には要請しない考えを示しました(日経新聞5/8)。また、そもそも経団連の倫理憲章には罰則規定がないため、一部企業の「抜け駆け」によってルールが形骸化する可能性も指摘されています。 海外の事例をみると、アメリカでは学生のインターンシップ(研修制度)が広く定着しており、事実上の採用選考活動の場となっています。しかし日本では、経団連が倫理憲章でインターンシップと採用選考活動を関連づけることを禁じています。こうした現状について、人材コンサルタントの常見陽平氏は、インターンシップが青田買いの舞台になっていることは「公然の秘密」だと指摘し、「そもそも、なぜインターンシップを選考の手段にしないのか」と疑問を投げかけました(アゴラ3/30)。 はたして就職活動時期の変更は、これから就職活動に臨む大学生にとって吉報となるでしょうか。新しい就職活動のルールは、早ければ今の大学2年生から適用となる見通しです。