【2024 スーパーバイク世界選手権 第10戦】バウティスタがダブルウィン達成! 復帰レースとなるラズガットリオグルは全レースで2位獲得
2024年9月27日から29日にかけて、スペインのアラゴン州アルカニスにあるアラゴンサーキットでスーパーバイク世界選手権第10戦が行われた。フランスで負傷し、直近2大会、計9レースを欠場していたランキングトップのトプラク・ラズガットリオグル(ROKiT BMW Motorrad WorldSBK Team)がついに復帰。ランキング2位のニッコロ・ブレガ(Aruba.it Racing – Ducati)との差は一気に13ポイントにまで詰められている。今シーズンも今大会を含め残り2戦。最終盤にして最大の山場を迎えている。 【写真はこちら】SBK 第10戦で活躍したライダーたちの雄姿 ●イアンノーネがSBK初優勝! 復帰後初レースとなるラズガットリオグルが2位を獲得 土曜日のレース1は快晴の中行われた。グリッドを決めるスーパーポールではランキング2位のブレガがポールポジションを獲得。2番グリッドにはアンドレア・イアンノーネ(Team GoEleven)、3番グリッドにはアルバロ・バウティスタ(Aruba.it Racing – Ducati)がつけた。意外にもバウティスタがフロントローからスタートするのは今季初である。 4番グリッドには前戦ハットトリックを達成したダニーロ・ペトルッチ(Barni Spark Racing Team)、そして、5番グリッドには復帰したラズガットリオグルがつけた。フリー走行ではいきなりトップタイムを出すなど相変わらずの速さをみせたラズガットリオグルだが、怪我明けのレースでどこまで上位に進出できるかに注目が集まる。 気温23度、路面温度34度のドライコンディションの中、18周のレース1がスタートした。ホールショットを奪ったのは2番グリッドスタートのイアンノーネ。そしてこちらもスタートを決めたラズガットリオグルが前半セクションで2位までポジションを上げた。 ターン4ではサム・ロウズ(ELF MARC VDS RACING TEAM)がハイサイドを喫し、転倒。この際にロウズのマシンからは白煙が出ており、オイルが撒かれてしまった。このため、赤旗が掲示され、レースは一時中断。コース清掃が行われ、レース再開となった。 再度ウォームアップが行われる中、なんとブレガのマシンがストップ。トラブルによりレース直前でのリタイアとなってしまった。 1周減算の17周で再スタートを切ったレース1。2度目のスタートでもイアンノーネはホールショットを奪い、ペトルッチが2位につけた。3位にはアンドレア・ロカテッリ(Pata Prometeon Yamaha)が上がり、ラズガットリオグルは4位につけている。 ラズガットリオグルはバックストレートでロカテッリを捕らえ3位に浮上。さらに、翌2周目には同じストレートでペトルッチも攻略したラズガットリオグルはイアンノーネの背後に迫る。 5周目、アレックス・ロウズがペトルッチと3位争いを繰り広げる中、バックストレートでバウティスタが自慢の加速力を駆使し4位に浮上。その前方ではラズガットリオグルがイアンノーネに仕掛けるも、ここはイアンノーネが抑え込んでいく。 抜け出すライダーは現れず、複数台によるトップ争いとなる中、7位走行中のギャレット・ガーロフ(Bonovo Action BMW)がファステストラップを記録。3位争いは各車積極的な動きを見せ、ペトルッチが3位を奪い返し、ロウズ、バウティスタの順となる。 勢いに乗るペトルッチは7周目にラズガットリオグルとイアンノーネを一気にかわしトップに浮上。4連勝を目指し中盤にしてトップに躍り出た。 残り9周のターン1でバウティスタがブレーキングをミスし後退。その隙にガーロフが4位に浮上した。そしてトップ争いではイアンノーネが再びペトルッチに襲い掛かりトップを奪い返す。 ラズガットリオグルも続こうとしたがラインを外してしまい、ガーロフが3位にまで浮上した。フリー走行から好調のガーロフはこの決勝レースでも速さを見せることになる。 ガーロフとラズガットリオグル、そしてバウティスタがペトルッチをパス。そして2位に上がったガーロフはトップのイアンノーネにもくらいついていく。 残り7周の時点でトップ争いは3台に絞られ、イアンノーネ、ガーロフ、そしてラズガットリオグルによる優勝争いに。 残り5周、ラズガットリオグルがガーロフをパスし2位に浮上。しかし、ガーロフも離される事なくラズガットリオグルの背後にぴたりとつく。そこにバウティスタもファステストラップを出し再び優勝戦線に復帰する。 残り3周、渇望していた優勝を手に入れるため、イアンノーネがファステストラップを叩き出し逃げにかかる。そして2位以下を引き離したイアンノーネがトップチェッカー。SBK初優勝を挙げた。 2位にはガーロフとバウティスタを抑え切ったラズガットリオグルが入り、復帰戦を表彰台フィニッシュで飾った。3位にはフリー走行から常に上位でセッションを終えていたガーロフが入っている。 ラズガットリオグルは連勝が止まったものの、ランキング2位のブレガがノーポイントに終わったため、13ポイントから33ポイント差にまで拡げている。 ●バウティスタが日曜日を完全制覇! ラズガットリオグルは2位表彰台 日曜日の午前中に行われたスーパーポール・レースはバウティスタが優勝。アラゴンでは高い勝率を誇るアラゴンマスターが意地のトップチェッカーを受け今季3勝目を挙げている。 2位には惜しくも届かなかったラズガットリオグルが入り、またしてもアラゴンでの初優勝は追わずけとなった。しかし、3位のブレガの前でしっかりフィニッシュしており、着実に失ったポイントを取り戻している。スーパーポール・レース終了時のラズガットリオグルとブレガのポイント差は35に拡がっている。 最終レース2もレース日和。スーパーポール・レースを制したバウティスタがポールポジション、2番グリッドにラズガットリオグル、3番グリッドにはブレガがつけている。4番グリッドにレース1の勝者であるイアンノーネ、5番グリッドにはガーロフが入った。 気温25度、路面温度38度のドライコンディションの中、18周の最終レース2がスタート。バウティスタがホールショット、ラズガットリオグルが続き、イアンノーネがブレガをパスして3位に浮上した。 ブレガはさらにマイケル・ファン・デル・マーク(ROKiT BMW Motorrad WorldSBK Team)にもパスされ5位に後退するも、バックストレートで4位を奪い返す。 2周目、ブレガはファン・デル・マークに抜き返されるとブレーキングミスにより9位まで後退してしまう。一方、タイトル争いのライバルであるラズガットリオグルはトップのバウティスタの背後につける。また、ラズガットリオグルは上位勢で唯一フロントにハードを選択している。 5周目になると3位のイアンノーネが離され、トップ争いは早くもバウティスタとラズガットリオグルの2台に絞られた。 バウティスタの後ろにピッタリとついていたラズガットリオグルだが、バウティスタのストレートスピードと加速性能により仕掛けるまでには至らない。特にコース後半にはバックストレート、そしてトラクションが求められる最終コーナーではドゥカティが有利であり、ラズガットリオグルがそのように仕掛けるのかに注目が集まった。 そんな中、残り8周でブレガがイアンノーネ、ガーロフを捕らえ、3位にまでポジションをあげてきた。しかし、この時点でトップ2とは5秒近いギャップがつけられていた。 こう着状態でありながら接近戦を繰り広げていたトップ2だったが、残り4周でバウティスタがファステストラップを叩き出し、ラズガットリオグルとの差がコンマ1秒からコンマ6に拡がっていく。 さらにファステストを更新したバウティスタがラストスパート。一気に3秒ものギャップを築いたバウティスタがトップチェッカーを受け、地元スペインでダブルウィン達成となった。バウティスタにとって63勝目、そしてスペイン人ライダーとしての100勝目となった。 ラズガットリオグルはアラゴンで待望の優勝を飾ることはできなかったが、それでも復帰後の3レース全てで2位を獲得。ブレガが3位に終わったこともあり、タイトル争いでは39ポイント差まで拡げている。 今シーズンも残りあと2戦6レース。直近のレースを見るとバウティスタの勢いが戻りつつあり、ラズガットリオグルとの差は81ポイントだが、トップを脅かすのはもしかするとブレガではなく、バウティスタなのかもしれない。 次戦は2週間後の10月11日から13日にかけて行われる第11戦ポルトガルラウンド。ラズガットリオグル、バウティスタともにかなり回復した状況での戦いになるだろう。チャンピオンが誰になるのかはまだまだわからないと思い知らされたレースだった。
河村大志