バスドライバー不足、旅行業界のコロナ禍離職…「修学旅行」をとりまく“人手不足”が深刻
◆宿泊施設や旅行会社も、どこもかしこも“人手不足”……
人手不足はバスやタクシーに限った話ではありません。宿泊施設や旅行会社も悩まされています。特に修学旅行で課題になるのが食事の提供です。 「修学旅行の場合、多ければ数百人分の朝食をいっせいに用意する必要があります。その時間だけ人手を確保するのが難しく、それを理由に受け入れられないという宿もあります」と同協会事務局長の高野満博さん。 昔は学生が通学前にアルバイトとして入ることも多かったようですが、授業が厳しくなったり少子化の影響があったりして、難しくなっているようです。 そもそも教育現場の人員不足も深刻です。修学旅行に探究学習の要素を取り入れるところが増えていますが、教員自身が体験したことがないため、手探りで一から取り組む必要があり負担は小さくありません。 「修学旅行も物価高の影響により、今までと同じ金額で同じことができないような状態にもなってきました。学校は地域性や子ども、家庭の状況も考えたうえで、生徒の学びに効果の高い場所を選んでいかなくてはなりません。 ただ、先生たちはGIGAスクール構想による新たな取り組みなどが増えて、本当に忙しい。だから新しい行き先や内容を検討する余裕がなく、課題は感じていてもこれまでの内容を引き継いでいるケースも少なくないと思います」(竹内さん) 旅行会社からの新しい提案を期待しても、旅行会社も人手不足。「コロナ禍でベテランの退職や転職が相次ぎました。今、採用も積極的にしていますが、経験不足のため新たな提案にまでは至っていないのが現状だと思います」と竹内さん。 一方で探究学習の普及により、少人数での体験プログラムのニーズが高まっています。これまで団体の受け入れが難しかった施設が引き受けてくれるようになるなど、ポジティブな変化も見えています。 社会の変化に対応しながら、教育的な意義をいかに保っていくか。修学旅行の計画には、関係者のバランス感覚や創意工夫がますます必要になってきそうです。
▼古屋 江美子プロフィール
子連れ旅行やおでかけ、アウトドア、習い事、受験などをテーマにウェブ媒体を中心に執筆。子ども向け雑誌や新聞への取材協力・監修も多数。これまでに訪れた国は海外50カ国以上、子連れでは10カ国以上。All About 旅行ガイド。
古屋 江美子(旅行ガイド)