利回り付きステーブルコインのインパクト──数兆ドルの市場をめぐって競争激化
決済に特化
ステーブルコイン発行者がマネー・マーケットの利回りの形で何かを還元することは賢明な戦略であり、サークルやテザーのような、取引のために担保として差し出されるトークンのほとんどを占める伝統的なドル連動型ステーブルコイン発行者にとっては懸念のもととなる可能性もある。 しかし、純粋に決済に特化したステーブルコインを使用し、大規模に取引を行うことで得られるコスト効率など、ユーザーに還元する方法は他にもある。これが、フィンテック大手のペイパルが手がけるステーブルコインPYUSDの狙いだ。 ペイパルのSVP兼ブロックチェーン責任者であるホセ・フェルナンデス・ダ・ポンテ(Jose Fernandez da Ponte)氏によれば、今後数年間で、ステーブルコインの決済機能とマネー・マーケット・ファンドの利回り創出機能が別々のものとして提供される可能性があるという。 「数年後には、企業の財務担当者はマネー・マーケット・ファンドに流動性を保ち、支払いが必要になった瞬間に、そのマネー・マーケット・ファンドをステーブルコインに切り替えて支払いを行うようになると思う。それがステーブルコインの目的だからだ」とフェルナンデス・ダ・ポンテ氏は語った。 ペイパルは明らかに、USDTやUSDCと比較して、その預かり資産がどのように積み上がるかを心配するよりも、より高速で安価な決済を行う能力を磨くことに重点を置いているようだ。その証拠に例えば、PYUSDは現在、高スループットのソラナ(SOL)ブロックチェーンと統合されている。 しかし、PYUSDのような決済に特化したステーブルコインが、中央銀行デジタル通貨(CBDC)やイールドシェアトークンを前にして必ずしも成功すると皆が考えているわけではない。バンク・オブ・アメリカのアナリストらも先日、レポートの中でそのような見解を発表した。 PYUSDはUSDTやUSDCに比べれば規模は小さいが、Xoomやヴェンモ(Venmo)のようなアプリケーションを通じてフィンテックや決済の世界で大きな影響力を持つペイパルの失敗に賭けることは賢明ではないだろう。 「正直に言って、暗号資産業界の中ですでにペイパルより優れた流通を持っている企業があるだろうか」とドラゴンフライのハディック氏。 「私の考えでは、PYUSDがDeFi(分散型金融)を普及させたり、他の(ペイパル以外の)アプリケーションを普及させたりする可能性は低い。しかし、ペイパルは、バックオフィス業務の負担を軽減し、資本効率を高めることで利鞘を50ベーシスポイント改善し、おそらくその一部を顧客に還元することができるだろう」