「弱者は死ね」コロナ後遺症マンガ作者に誹謗中傷も。『水ダウ』コロナ対策いじり企画に“ただただ悲しく思う”理由とは
後遺症を語れなかった
――新型コロナウイルスやその後遺症についての報道が少ない現状について、どのようにお考えですか。 「後遺症について語ることがタブーとされていた期間が非常に長かったと思います。 Twitter上での後遺症の存在否定の誹謗中傷だけでなく、その他に私自身の経験したことですが、ニュースサイトのコメントに『後遺症を診てくれる病院がない』と書いたら、それ以降書き込みができなくなりました。 患者さんの中には、Xで後遺症についての投稿をしたところ、アカウントをバンされたケースもありました。こういったことから思うに、後遺症を話題に扱ったり、表立って意見したりすることが阻まれていたのではと感じています。 私たち後遺症患者は、長い間、見えていない幽霊のような扱いでしたね。 また、後遺症を扱うことに消極的な報道姿勢には疑問を覚えます。感染対策と経済活動が対立すると一部では考えられているためだと思いますが、相反するものではないと私は考えます。 新型コロナウイルス感染症及び後遺症に関する事実をきちんと認識・把握・周知し、その上で感染対策をして、後遺症になって働けなくなったり、パフォーマンスが落ちたりする人を出来る限り減らすことは、長期的視点から言って、経済を回すことにつながるでしょう。報道関係者はその視点を持ってほしいですね」
コロナ禍のピークは今
――8月28日に放送された『水曜日のダウンタウン』(TBS)で、ピーク時のコロナ対策を茶化すような企画がありました。これについてはどのようにお考えですか。 「コロナ禍のピーク時は、今現在だと思っています。下水中のウイルス量を継続して測定している札幌市下水サーベイランス(※1)の2024年9月3日の発表によると、ウイルスRNAの排出の最大値を更新したことを発表しました。 今は、感染しても受診しなかったり、検査しなかったりすることも多いため、医療機関の週次報告により感染動向を把握する定点把握では、正確な感染状況は把握できません。しかし、この下水サーベイランスのグラフを見ると、5類移行後、ずっと高止まりしている状況だということがよく分かると思います。 この事実から考えても、番組の内容をただただ悲しく思い、感染症への無理解を助長するのではないかと懸念しています。 誰もコロナ禍にいい思い出がなく、コロナ対策についても『考えたくないから冗談にしてしまおう』ということなのかもしれませんが、嫌でも考えざるを得ない私たち患者にとっては冗談では済まされません。 Xには『嫌なら番組を観なければいい』という意見もありましたが、現実的には番組が『感染対策をしなくてよいとお墨付きを与えた』と受け取る人もいて、公衆衛生を考えると、視聴しなければ済むという話ではないと思います。コロナ対策をお笑いとして成立させるなら、感染症の専門家に監修してもらうなど、もっと違うやり方があったのではないでしょうか。