「母親にとって自分はゴミ以下なのかな」 36歳の引きこもり男 母子2人暮らしの自宅に火をつけたあの日
そう感じた男は「死にたい」と思い、部屋のゴミ袋に火のついたマッチを落とした。火は瞬く間に燃え広がり、息が苦しくなってベランダへ向かったのだという。 しかし、母親は… (母親)「彼が私に声をかけた覚えがないんです。息子は居間のイスに座って、じっとしていました。居間では泣いていなかったと思う」 男の部屋には雑誌などの可燃物が多くあり、後に警察が行った燃焼実験では、火はたった3分で天井にまで広がったという。 母子が住んでいたのは3階の309号室。2人は別々にベランダに逃げた。母親はその後、逃げる際に高さ約7.5mのベランダから転落し、骨盤を折るなどの大けがをして半年間入院することになった。男は配水管を伝って1階下のベランダへ降り、腕などにやけどをして病院に運ばれた。 火は通報から約2時間後に消し止められたが、2人が住んでいた309号室は78%が焼けた。上の階では熱で窓ガラスが割れ、他の部屋もベランダが焼けるなど、この市営住宅ではこれまでに修復費が約1400万円かかった。さらに309号室が住めるようになるまでには、内装費としてもう1000万円ほどが必要になるという。 (弁護士)「火事を起こした息子を今、どう思いますか?」 (母親)「彼がこういうことを起こした半分というか、大部分は私のせい。きょうだいにも『お前の育て方が悪かった』と言われました。彼は悪くない、全て私が悪かったんです」 ■週に一度、面会に通う生活 「一緒にいたい」息子の言葉に母親は 男は事件の後も、入院中の母親宛に「死にたい」と手紙を書いた。 (弁護士)「なぜ『死にたい』と、入院中のお母さんに伝えたのですか?」 (男)「私の気持ちを理解して欲しい、それだけですね」 母親は今も週に1度、拘置所へ男の面会に通っている。 (男)「(面会は)ありがたい。一方で、(事件前は)毎日会えていたのが、今は週1回の短い時間なのが、すごくつらく、寂しいです」 その言葉を聞いて、傍聴席に座る母親はハンカチで涙を拭った。
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