「母親にとって自分はゴミ以下なのかな」 36歳の引きこもり男 母子2人暮らしの自宅に火をつけたあの日
法廷には開廷前から、母親(63)のすすり泣く声が響いていた。 彼女の息子、被告である無職の男(36)は2022年5月、当時、母子2人で住んでいた名古屋市内の市営住宅の一室に火を放った「現住建造物等放火」の罪に問われている。 【写真を見る】「母親にとって自分はゴミ以下なのかな」 36歳の引きこもり男 母子2人暮らしの自宅に火をつけたあの日 初公判で男は「間違いありません」と起訴内容を認めた。 (被告の母親)「彼は悪くない、全て私が悪かったんです」 裁判員裁判の法廷で語られたのは、引きこもりの息子(36)と母親(63)、2人きりの生活の“これまで”だった。 ■アトピーでいじめられた小学校 職を転々として“引きこもり”に 男が幼稚園の頃に両親は離婚し、男は母子家庭で育った。 小学校ではアトピーが原因でいじめられ、中学校では授業を受けず図書室にこもった。 専門学校を卒業後、初めはロボットを作る会社に就職したが、人間関係に悩んで辞めた。 その後も職を転々とし、最後は愛知県春日井市の工場で働いたが、ライン作業での事故をきっかけに、同僚を信じられなくなって辞めた。 (弁護士)「仕事につかなくなってから息子さんはどんな生活を?」 (母親)「うちにずっといるような生活です」 (弁護士)「その生活はどのくらい続いていますか?」 (母親)「10年近くですかね」 もっぱら自分の部屋にこもってパソコンを触る生活だったが、親子で出かけることもあったという。 (弁護士)「息子さんとのやりとりは?」 (母親)「週に一度は彼が運転する車で買い物に行きました。食事も一緒に食べていたし、それなりに会話はできていました」 (弁護士)「話しづらいことはあった?」 (母親)「部屋に閉じこもっていたので、そういう時はなかなか声をかけられなかったが、ご飯の時には話ができた」 一方で、10年におよぶ引きこもり生活の中で、母親は男に暴力を振るわれたことが二度あったという。 (母親)「一度目は、首に手をかけられた。二度目は彼の部屋に入った時に、手で突き飛ばされた」 しかし母親は、それはあくまで「自分のせい」だと繰り返した。
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