なぜ川崎は3か月ぶりに暫定首位に浮上することができたのか…残り9試合でV3達成の可能性は?
王者の称号を背負っている以上は、いっさいの言い訳はしない。現実を受け入れ、その上で人事を尽くした川崎の今シーズン2度目の4連勝はマリノス戦から始まり、ACLの関係で試合が組まれていないマリノスをついに追い抜いた。 残り試合は川崎の9試合に対してマリノスは10試合。直接対決を終えている状況で、マリノスが全勝すれば川崎は追いつけない。しかし、マリノスも川崎戦を含めYBCルヴァンカップ準々決勝2試合、ヴィッセル神戸とのACLラウンド16で公式戦4連敗を喫している。暫定とはいえ首位を明け渡した重圧は少なからず存在する。 だからこそ、鬼木監督は鳥栖戦後の公式会見で、残り9試合を「一戦必勝で戦っていくだけ」とトーナメント態勢でいくと明言。その上でこう続けた。 「これ(首位)をプレッシャーに感じずに、自分たちが望んでいるところでどれだけやっていけるか。すべては自分たち次第だと思っている」 今後のスケジュールを見れば、3位の広島をホームに迎える10日の第29節、5位の柏レイソルのホームに乗り込む17日の第30節と上位勢との対決が続く。しかも、その間の14日には、本来はなかった敵地での名古屋グランパス戦が組まれた。 7月16日に組まれていた第22節は、チーム内のコロナの陽性判定者が多発していた名古屋が、管轄保健所から活動停止の指導を受けたとJリーグに報告。これを受けて急きょ延期が決まったが、実は保健所の指導はなかったと後に判明している。 虚偽報告を受けて調査を進めてきたJリーグは、8月30日に事態を重く見ながらも故意ではなかったとして、罰金200万円とけん責処分を名古屋に下した。処分が軽すぎるとネット上を騒然とさせたなかで、川崎は中止に至った経緯にあらためて遺憾の意を示すとともに、吉田明宏社長名で次のような声明を発表している。 「川崎フロンターレは、これからもフットボールに真摯に向き合い、目標であるリーグタイトルの獲得に向けて、応援してくださるすべての皆様と共に戦ってまいります」 中2日で敵地に乗り込む3日の湘南との次節を含めて、広島、名古屋、柏と続く9月戦線がヤマ場になるだろう。一転して10月に入ると8日の清水エスパルス戦、12日に延期された京都戦、そして29日の神戸戦とホームでの戦いが続き、敵地・味の素スタジアムに乗り込む11月5日のFC東京との最終節が待つ。 残り9戦で奇跡を起こすためのキープレーヤーは家長になる。 今シーズンの川崎でただ一人、全25試合に出場している家長は現在、右ウイングとして9試合連続で先発。そのうち8試合でフル出場し、残る1試合も後半アディショナルタイムでの交代とフル回転。その間に6ゴールをあげている。 最後はぶっつけ本番の5バックを敷き、鹿島を2-1で下した8月27日の第27節では最後は家長を最前線で起用。鬼木監督は試合後に賛辞を惜しまなかった。 「得点に絡めるし、時間が必要なときにはしっかりと時間を作れる点でやはり別格。ゲームの流れを見て、そのときに何が大事なのかをしっかりと判断できるし、それを彼がすることでチームへのメッセージになる。どこに置いても、そういうプレーができる」 苦戦を続けてきた過程で、ACLは日本勢で唯一グループステージ敗退を喫し、天皇杯では3回戦でJ2の東京ヴェルディに苦杯をなめさせられた。準々決勝から登場したルヴァンカップも、セレッソ大阪の前にアウェイゴール差で敗退。残された唯一のタイトルとなるリーグ戦に3連覇の夢を乗せて、川崎は執念をむき出しにして前へ進んでいく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)