【特集】“24時間断らない病院”は『医師の働き方改革』でどう変わったのか?若手医師の一日に密着することで見えてきた課題も…「日本全体の医療が立ち行かなくなる可能性は、考えておく必要がある」
この制度は、労働時間を抑えるための“隠れ蓑”との指摘も。『働き方改革』の開始に合わせて、2022年に労基署が許可した件数は、前の年の約6倍に急増していました。
現場は、医療が進歩したゆえのジレンマを抱えているといいます。 (神戸市立医療センター中央市民病院・木原康樹院長) 「24時間365日対応を求められる職業として、医療の内容が複雑になり、求められる精度も高くなり、色々なことをやらなくてはいけない。限られた医師だけで対応できないのが、現実です」 この病院では、宿直明けは午前中で退勤したり、研修を受けた『特定看護師』が一部の医師の業務を分担したりして、医師の残業時間が増えないよう対策を取っています。 しかし―。 (木原院長) 「労働基準法に準拠して、全く後ろ指をさされない病院になったかといえば、私はまだまだ程遠いと思っています」 一部の科については、残業時間を規定内に抑えることが難しいと判断し、特例措置で一時的に上限を引き上げ。「医師の数を増やせば、過度な業務負担は解消できるのではないか」という声もありますが、教育の場を簡単に作ることは難しく、医師の数が大幅に増えることは見込めないのが現状です。 (木原院長) 「日本全体の医療が立ち行かなくなる可能性は、考えておく必要があるんじゃないかと思います。国民の側にも、もうちょっと医療の利用を考えていただく必要がある時期に差し掛かってきた感じはあります」
2024年4月、厚労省の調査に「『働き方改革』の影響で医療体制の縮小が見込まれる」と答えたのは、全国で約6パーセント、450を上回る医療施設でした。高齢化社会が加速していく中、今ある医療を維持するため、私たち一人ひとりも考えなくてはなりません。 (「かんさい情報ネットten.」2024年5月14日放送)
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