【特集】“24時間断らない病院”は『医師の働き方改革』でどう変わったのか?若手医師の一日に密着することで見えてきた課題も…「日本全体の医療が立ち行かなくなる可能性は、考えておく必要がある」
2019年の厚生労働省の調査では、病院に常勤する医師の約4割が過労死ラインの月80時間以上残業し、そのうち4人に1人は倍の160時間を超えて残業していました。日本の医療は、医師たちの献身によって支えられてきたのです。 2024年4月から始まった時間外労働の上限規制では、患者の診察にあたる勤務医について、原則として年間の残業を960時間、月平均で80時間以内にするよう定めました。
出勤午前7時、日勤終了午後5時、そこから始まる宿直…深夜まで救急対応・仮眠10分で呼び出され、隙間時間に“自己研鑽”…医師たちのハードな勤務態勢
『神戸市立医療センター中央市民病院』は“断らない救急”を掲げ、2024年には10年連続で救命救急センターが全国1位の評価を受けるなど、地域の医療を支えてきました。一方で、過去5年間で2回労基署の是正勧告を受け、“ブラック職場”と呼ばれることも…。
『働き方改革』で、どう変わったのか―。呼吸器内科に勤める斉藤正一郎医師(27)の一日に密着しました。 出勤は、朝7時。 Q.早いですね? (神戸市立医療センター中央市民病院・斉藤正一郎医師) 「定時が午前8時から午後4時45分までで、朝始まる前に担当している患者さんの採血の結果とか、夜間に急なことがなかったか確認して、共有します」 日中は、担当する入院患者や外来患者の診察を行います。 (斉藤医師) 「気管支鏡検査といって、胃カメラとか大腸カメラの肺バージョンがあって、午前中は大体それをしています」 医者になって4年目。徐々に仕事のペースをつかんできました。
午後5時、日勤終了。 (斉藤医師) 「おつかれさまでした。これで日勤が終わり、今から当直の勤務が始まります」 この病院では、各科の医師が毎日宿直勤務を担当。月に2回程度まわってきます。
-スマホに着信 -(斉藤医師) -「救急当直の斉藤です」 この日、斉藤医師は内科の宿直医として、翌朝まで救急からの呼び出しに対応します。
食事は病院内のコンビニで購入することが多く、この日はサラダを食べていました。 (斉藤医師) 「おいしいですね、野菜は。食事は大事ですね。当直だけじゃなくて、人生にも(笑)」 Q.もし携帯が鳴ったら、どうするんですか? (斉藤医師) 「鳴ったら、蓋を閉じて救急に行きます(笑)いつ鳴るかわからないので、ある程度緊張感を持ちながらリラックスします。肉体的なこともそうですけど、精神的な面でも、最初はきつかったですね」
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